ポスト平成時代を見据えたトップ交替と藤原氏のガバナンスの知恵

 

電機メーカーのトップ人事発表が相次いでいる。ソニー、東芝、三菱電機、Nidecなど、コメントした企業はそうであった。平成の終わりにトップ交替は集中する?2018 1 04

 

 24日にも、アンリツのトップ交替があった。橋本社長が代表権のある会長に、新社長は50代前半の濱田氏。橋本氏は2007年に代取専務、2010年に社長就任、業績回復とガバナンス強化に取り組んできたが、8年経過、60歳後半で、後進育成もあり、順当な人事だろう。この60代後半の実力トップが会長、50代の若手が社長というのはよくあるパターンであり、Nidecの永守氏、吉本氏も同様だ。いきなり、トップ交替ではなく、数年かけて禅譲するのだろう。これは、コア事業が明確な場合に多い。

 

 日本の一部上場企業トップの任期は7年、電機は6年弱であり、景気サイクルに近く、M&APMIを見極め、新事業が育つ期間からは、やや短い。かといって長すぎると権力は腐るゆえ、米大統領なども8年が上限だ。このジレンマを解決するには、こうした会長と社長とで、ゆっくりとバトンタッチもいいだろう。

 

 日本のトップ選出では、上述以外の2パターンも含め、大きくわけて、3つのパターンがあるように思われる。

 

 第一は、コングロマリット、かつての総合電機のように、複数のコア事業がある場合、最も稼いだ部門のトップがなるものだ。明快でフェアでインセンティブもあるが、部門間の争いなど副作用も多い。

 第二は、ジャパンストライクゾーンにある程度、ポートフォリオを絞った例が多く、稼いだ部門ではなく、横グシを効かせうるトップを選ぶ場合だ。選出の客観性担保と稼いだがトップになれない部門長への対処が鍵だ。

 

第三は、上述のコアが明快な企業である。この問題点は、コア部門の業績不振の場合の対応や、新規事業が生まれにくいことだろう。その対処としては、万が一に備え、シャドーキャビネット的な人事も考えておくことだろうか。

 

最近は、第一のパターンから、ポートフォリオやガバナンス重視の観点から、第二のパターンに移ってきているようであり、ソニーや東芝が、こうした傾向だ。監督・外部活動中心の会長、執行・内部中心・横グシを効かせる社長、その下に、部門トップが並ぶ。オムロンなども近いかもしれない。

 

さて、この会長と社長の二重権力性、その意味は、役割分担と権限禅譲があるが、日本では、古くから天皇家と摂関家、あるいは、将軍家に見られ、やや日本に特徴的であろうか。この体制は、藤原不比等が築いたものであり(参考文献「藤原氏―権力中枢の一族 (中公新書) 2017/12/20倉本一宏 ()」、巧みに設計されている。日本企業も、会長と社長に、社外取締役などを組み合わせて、永続性があるガバナンスと稼ぐ力を両立できる仕組みを作れるだろうか。