日経新聞はじめ複数が東芝のメモリ売却に関し、中国当局の独禁法審査が、最終期限の5月28日から遅れた場合について報じている。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29702150S8A420C1TJC000/
会社からは正式な開示がなく、方針どころか、審査期限も否定している。記事にあるように、メインバンク等への報告からのリークか一部のトップからのリークだろう。
日経と他で報道ニュアンスに差
日経では、①当局から期限までに承認(シナリオ1)、ベイン連合に売却、東芝は4割程度の出資を残すが徐々に減らしていく、②売却契約内容を見直し、再審査を申請(シナリオ2)、7月1日にはベイン側は違約金を払い、契約解除できるが、どれだけ時間がかかるか不明、③売却をやめIPO(シナリオ3)、である。日経では、いずれにせよ、メモリを分離する方針は不変という書き方だが、これに対し、毎日報道では、メモリを中に取り込むという可能性も書いている。
マクロ要因も影響
安倍政権の混乱、米中の緊張関係の中で、いろいろある。関係者が例によって、アドバルーンとリークだろう。官邸が変われば、いろいろ代わり、役員人事もゴタゴタと代わる可能性もあるだろう。その中での、おしゃべりな関係者が得意げに、話すとしたら、ガバナンス上問題だろう。当然ながら、他の内閣なら、官邸や経産省など人事も変われば、東芝への姿勢は厳しくなる可能性もあろう。ベインは中止として、最終的に、IPOの場合でも、INCJや車谷会長の出身のCVCキャピタル等、さらに10兆円以上のQコム買収が米政府の反対でできないブロードコムに関連して、シルバーレイク等のファンドが再登場もありえよう。ただ、その場合は、NAND市況の変化もあり、金額は大きく下がるだろう。
メモリを東芝本体が保有すれば、共倒れ
ベイン以外の売却でも、IPOでも、いいが、絶対にメモリは、外に出すべきだ。また、早く出さないと、NAND価格が下落している中で、価値は減ってしまう。メモリがあっても、複数事業で相関下げて分散効果で安定化するとの識者もいるようだが、ナンセンスだ。まさに、これがコングロマリット経営であり、世界中で否定されている。
確かに、金融では、ポートフォリオでは分散効果でボラが下がるが、ファンドと実業の差は、大きく、①EXITに時間差があり、②実業ではシナジーが大事。この違いを無視した暴論だ。もし、ずっと中に入れれば、三度、危機となり、今度こそ、政府も誰も、助けないだろう。
シャープレシオを考慮するとリターンの見方は違う
過去30年の東芝全体のOPMは2%、シャープレシオ0.53、半導体はopm7%、シャープ0.4だ。単なる利益率ならいいが、リスクが、東芝の財務のレベルを超えている。総合電機の全体と半導体部門の、OPMとシャープレシオを比べると、当然ながら、半導体は、OPMは高い例はあるが、シャープレシオは1以下と低い。こうしたリターン特性の大きな差こそが、東芝において、半導体を別会社化すべき根拠でもあろう。