去る4月26日のオムロンの決算IR説明会で、宮田CTOが技術経営強化について説明があった。
https://www.circle-cross.com/2018/05/28/オムロンの決算発表-4月26日-と宮田ctoによる技術経営強化/
6月号の日経エレクトロニクスで、宮田CTO(代表取締役)取材記事「役立つデータは脊髄反射層にある、オムロンならではのIoT戦略とは」が参考になる。http://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00301/00005/
この中で、イノベーション推進本部(IXI)の下に、技術経営、特にオープンイノベーションを実践するための組織として、新会社「オムロン サイニックエックス(OSX) 社長 諏訪正樹氏」設立にも触れている。
CTO室長の勅使川原氏と面談
今回、6月11日に、IRを通して、CTO室長の勅使川原氏と面談、IR説明会では、やや不明だったR&D関連の組織などについて確認、議論させて頂いたので紹介したい。
まず修正だが、「同社のR&Dは、約500億円程度だが、2016年度の有報によれば、IABが164億円(4.8%)、EMCが46億円(3.0%)、AECは92億円(6.5%)、SSBは18億円(2.2%)、HCBが62億円(5.7%)、その他本社などは30億円程度だ。」 と記したが、正しくは、この「その他本社」はBL等の部門で、全社のR&Dは100億円程度あり、これが主として、技術知財本部(主拠点は、京阪奈イノベーションセンター)である。
イノベーション・R&D体制
同社のR&D体制は、30年程前は、中央研究所があり、事業サイドが一部開発費を負担する依頼研究のような仕組みを取り入れる時期もあったが、どうしてもビジネスでは手が回らない小粒なテーマが増え、一方で、独自テーマの場合、ビジネスから飛び地では、成果がでないジレンマがあった。
そこで、この10年で、現在のような体制になってきた。
体制の切り口は、まず、時間軸で、事業部サイドのR&Dは3年以内のもの、コーポレートラボの京阪奈イノベーションセンターでは、3〜5年(結果として7年など更に長期になる場合もある)、切り分ける。また、ものづくりに関する工法・設備・材料に関しては、比較的短期テーマを中心に、グローバルものづくり革新本部(拠点は、京都、草津、岡山)が担う。
技術知財本部
組織的には、CTOの下に、技術・知財本部があり、主拠点として、京阪奈イノベーションセンターにおいて、コーポレートR&Dの役割を担う。最近、新設された、エッジ型AI研究センター、ロボティックス開発センターも、技術知財本部傘下である。
イノベーション推進本部(IXI)
IXIは、全社のイノベーションのプラットフォームである。技術視点だけに留まることなく、近未来デザインから、ソーシャルニーズ創造のための戦略策定、事業検証、インキュベーションまでを一気通貫で行う近未来デザイン研究所(OSX)がある。
グローバルものづくり革新本部
グローバルものづくり革新本部は、京都と岡山、草津に拠点があり、R&D活動としては、工法、設備、材料開発を担う。
テーマの選定は未来予測からのバックキャスト
事業部のテーマやグローバルものづくり革新本部は、現場のテーマが多いが、コーポレートラボである技術知財本部、加えて、未来予測からのバックキャストで、R&Dテーマを定める。
オムロンの強み理解とIRと投資家アナリスト
組織的には、イノベーション推進本部の他、上記のものづくり革新本部、技術・知財本部などが本社組織として存在している。内部のR&D、OSXのオープンイノベーション、そしてM&Aの組合せが有効に機能していくのだろう。
オムロンの企業文化や地域特性なども考慮された、こうしたイノベーションを起す仕組み、人事政策はオムロンの大きな強みであり、根っこの力であろう。CTOが代取であるのも稀有だが、それだけ、イノベーションを重視している証拠だろう。投資家やアナリストも、短期的に出てくる業績ではなく、長期の業績向上につながる、こうした仕組みや企業文化に注目すべきだろう。しかも、こうした内容は、HPはじめ多くが公開されており、それを確認するための、取材にはIR側も積極的だ。