2018年6月28日(木)13:30-18:00、日立の中央研究所にて、毎年、恒例のR&D説明会が開催された。13時半から1時間、R&D戦略について、CTO常務の鈴木教洋氏、知財戦略について、戸田知財本部長よりプレゼン、質疑対応40分、15時10分より展示見学、17時15分より懇親会。今回は、残念ながら、木曜が教授会であり、参加できなかったが、コメントしたい。
マスコミでは、AIや線虫のガン発見など、話題の展示技術を中心に紹介しており、R&D戦略そのものは少ない。
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/01782/
https://news.mynavi.jp/article/20180703-658574/
知財に関しては、AI分析で発生するデータ、情報、知識、そしてデジタルソリューションの中での価値が重要であり、エコシステムを形成すべく、地財活動にチャレンジするようだ。
R&D100周年と2018中計
日立にとって、2018年は、1918年に、試験課内に「研究係」(初代研究係長は創業者の小平浪平)が発足して、100周年という記念すべき年である。また、R&D体制を2015年に、協創とUMADAをキーワードに大きく変革し、STEP1は、顧客協創、STEP2はデジタルイノベーション(LUMADA活用)、STEP3がグローバルスケール、オープンイノベーションと位置付けている。
R&D水準は適切か?
CSIが約500名、CTIが約2000名、SERが約100名という体制、3層構造は不変。日立の全R&D投資(3500億円、売上比4%弱)の20%の700億円の内訳は、先端基盤研究33%、先行研究19%、依頼研究48%であり、先端基盤研究投資のうち、180億円がLUMADAなどデジタルソリューション投資である。R&D投資効率を示すKPIであるOP/過去3年平均R&Dは、これまでの2以下から、2を超えている。
ただ、逆に言えば、売上や利益の伸びに比べ、R&Dを抑制、かつ、R&Dが全額で3500億円、これは、広義のライバルである、アマゾン、グーグル、インテル、サムスン、ファーウェイ、マイクロソフトが、定義にもよるが、軒並み1兆円であるのに比べ、少ない。さらに、そのうち、真水の部分は、350億円程度は、国内の大手電機やITと比べてもと少ないのではないか。
データサイエンティストとトップクラス研究者を育成
その他、注目点は、協創を推進するための具体策の1つとして、データサイエンティストの育成を挙げている。日立グループは現在、約700人のデータサイエンティストを、2021年度までに3000人まで増やすようだ。また、研究所側には現在、博士号を持つトップクラス研究者が200人ほどいるが、これを外部採用や日立グループ社員への博士号取得奨励などによって2021年度までに300人程度まで増やす方針。
むしろ、そういた研究者の処遇や、そのR&D体制の中での位置づけが重要だろうが、R&Dのコスト計上も含め、今後の課題だろう。