日本の製造業に関して、「製品技術はいいが、商売が下手だ」「会社は三流、技術は一流」などと、よく聞かれたものだった。いわば、製品の良し悪しと、企業の戦略やブランドは別であり、分離可能であった。製品も、ハードの売り切りが多く、一物一価、数量も明確であり、コスト分析が容易であった。
これが、クラウド上で、ソフトやパッケージが提供され、その価格も、契約により、タイミングと顧客次第で、複雑化されると、コスト分析が難しくなる。そこでは、企業と製品のブランドは一体化し、製品や商品と戦略、ビジネスモデルが不可分になる。コストの配分も、タイミングをどう見るのか、過去の減損なのか、未来への先行投資かが曖昧になる。常時、新製品が開発され、常時、提供されてくると、1イヤールールでは切りにくい。どこまでが仕掛かりで、どこまでは完成品在庫なのか。さらに、その事業の時価を将来CFから現在価値に割り引くとしても、一層困難になる。
もちろん、売上は契約数と契約単価、コストは人件費等だが、問題は、B/Sであろう。リカーリング型ビジネスと時価会計が、B/S分析を一層、見えにくくしている。
イノベーションモデルに関する認識の差
なお、SSISの向氏は、イノベーションモデルとR&D計上の仕方の日米差に関し、興味深い指摘をされている。まだリニアモデル型の日本は製品・技術開発を行う研究開発部門の費用をR&D費に計上するが、米国は製品技術開発のみならずビジネスモデルのイノベーションに製造・調達・営業・管理部門を含むノンリニアモデル型のR&Dになっている。つまり、SGAおよびR&Dの費用認識に差異があるという指摘であり、これが生産性の差異ではないかという。