「リーダーシップ」は、アカデミック、ビジネスを問わず、また、経営に限らず、古来、歴史的なテーマである。リーダーシップの定義は多様であり、リーダーの数だけ、学者の数だけあるだろう。その中では、Kotterの「リーダーシップ論」が、代表的かつ実践的であろう。ここでは、リーダーシップとマネジメントと差が示され、具体的なノウハウも記されている。
そこで、改めて、自分なりに、「リーダーシップ」の定義を試みると、「自らのビジョンに基づき、組織を、動かしたり、変形したり、するもの」ではなかろうか。これは、物理学のアナロジーだが、物理学では、モノを動かし変形するには、エネルギーがいる。それゆえ、リーダーシップを発揮するには、エネルギーがあり、かつ、その与え方を、組織の状況に応じて、変える(熱する、温める、焼き尽くす、光を当てる、共振させる)ことが必要であろう。組織をゆっくり変える時間的な余裕がある場合は、じっくり暖めればいいが、猶予が無い場合は、ある部分は焼き尽くす(リストラ)こともあろうが、それも限度がある。すなわち、自身の軸、ビジョンに向けてのベクトル軸はぶれないが、組織の状況(重心や固有振動数などの)を観察し、エネルギーの与え方を変えないといけない。それを間違えると、自身が追い出されてしまう。
下図で、ビジョンに向け、組織(肌色)をあるべき状態(オレンジ色)に、どう変える(形と位置)かが鍵だ。
ここで、縦軸は、能力などのレベルであり、横軸は多様だが、方向性や価値観であり、普通は多軸だろうが、組織を変えなければならない場合は一軸であり、右か左かであろう(例えば、保守か革新か、攘夷か開国か、ROE経営か否か、等)。リーダーシップに求められるエネルギー量は、組織重心の移動距離や移動時間、組織での作用反作用、移動に際する摩擦等に左右されるだろう。
そこで、大事なのは、「リーダー」や「トップ」は、この図で、どこに位置するかであり、それで、エネルギー量や移動時間なども決まる。
組織重心でのトップの位置は
組織のリーダーやトップである社長等が、この組織()の重心にあれば、組織は安定し、支持され易いが、これでは、組織は動かない。かつては、組織の重心の上、頂点にまさにトップがある場合もあったが、これでは、現状維持でよくビジョンがない。また、例えば、ビジョンが右上にあるとして、トップが組織の範囲を超え、重心から遠すぎると、人はついてこない。カリスマ的であっても、組織から弾かれてしまう。もちろん、ビジョンが正しいとして、例えば、トップが左下にあるなどは論外だ。そこで、株主あるいは、指名委員会の立場から、どういう位置にある人材をトップにすえるかが鍵となる。
「リーダー」の存在範囲は、ビジョンと現在の重心を結んだ線上で、重心より、右上から組織境界のギリギリまでとなる。ここで大事なことは、レベルが高い人材が、最適なリーダーではないということだ。
最近のトップは、むしろ、重心の近傍、少し上が多い。こういうトップは、そのキャリアやバックグラウンド(出身大学、職種、出身地や工場)が最大公約数的ゆえに、組織に調和し易く、トップも、自身の能力の限界を知る故に、組織を理解しやすく、社員のモチベーションも向上しやすい(自分もトップになれる)。 そして、重心に近いトップを、社内でも、社外でも、投資家でもいいが、真の「リーダー」が、テコの原理で、上手くコントロールするのがいいだろう。