ここのところ、連日のように、米中貿易戦争のネガティブ影響を強調する記事が出ており、それを、トランプ大統領の愚かさのせいだとする論調が多い。さすがに、米大統領とは、直接会ったことは無いので、彼が多くのメディア等が指摘するように、馬鹿かどうかは分からない。
米の対中警戒は以前から〜CFIUSとPCAST
しかし、現在の米国の対中国政策は、トランプに始まったわけではなく、それ以前から、共和党、民主党の両方で、(1)中国ビジネスでは、①知財やトレードシークレット、②為替操作等で米が損をしている、(2) 国防上も問題(サイバーなど、ファーウェイやZTEの通信インフラ)だ、との共通認識があるようだ。
実際、2016年の紫光集団によるWD買収が、米エクソン・フロリオ条項で対米外国投資委員会(CFIUS)審査により停止となった。
https://www.circle-cross.com/2016/02/27/2016年2月25日-wd-サンディスク買収-紫光の出資は米政府が中止/
エクソン・フロリオ条項は、米5021条規定で、米の安全保障を脅かす外国企業による米国企業の買収差し止めを目的とするもの。航空、通信、海運、発電、銀行、保険、不動産、地下資源、国防の9分野で、対米外国投資委員会が条項に触れると判断した場合に阻止する権限を持つ。いわば、TPPと真逆である。最近は、CFIUSに、DODが参加したようだ。
また、2016年末では、China Challengeに「宣戦」布告とも思われる発表がホワイトハウスによりなされている。https://www.circle-cross.com/2016/11/26/2016年11月26日-米国がchina-challengeに-宣戦-布告か/
むしろ、トランプを上手く利用して、対中警戒を強めているようにも思える。
バイラテラルかマルチラテラルか〜WTOの限界
もう一つ、トランプ関連で報じられているのは、国際交渉における、バイラテラルかマルチラテラルかという古くて新しい問題である。
こうした問題は、CRISにて、USTRの元メンバー討論があり、参考になる。かつて、80年代の日米摩擦で活躍した、カンターやカーラヒルズなども登場している。中国の見方も議論されている。
https://www.csis.org/analysis/conversation-six-former-ustrs
そもそも、マルチラテラルが、いいのは、チャネルの理論と似ている。
中間選挙
すなわち、日本のマスコミは、末世のように騒ぎたてるが、こうした米中の関係は、オバマ時代からであり、関税にしても、限界があり漏れていくし、本気なら輸入制限するだろう。要は、トランプの中間選挙対策に過ぎず、それを、株式市場も見透かしているのだろう。ただ、米中間の、関税率アップの応酬が、インフレとなり、その結果、金融政策において、利上げにつながることは要注意だろう。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35753470W8A920C1EA2000/