M&Aのバリエーションは、EV/EBITDA倍率でなされる場合が多く、相場は8倍前後というのが業界の目安だ。M&Aのプロとしても有名なNidecの永守会長は、説明会でも、同様の発言だ。
KPMGの調べでは、業種で異なるが、医薬ヘルスケアを除き、7-12倍のレンジである。いわば、M&Aの事業の回収期間が7〜12年、平均すれば8年強かかることを意味している。将来の成長期待が高く、長期視点の買収である、ヘルスケアやIoTでは、10倍を大きく超え、30-40倍もある。
東証一部上場会社のEV/EBITDA倍率推移は、下記のように、8倍前後である。つまり、現業の回収期間は8年程度だ。事業サイクルが短い半導体メモリ系は5倍程度であった。
8-9年の意味
この期間は、経営重心®でのジャパンストライクゾーンのサイクルである、5-10年に近い。また、日本の社長の交替サイクルは7年(東洋大2008年)が多いが、NRIの松田氏の2016年の研究「経営リレー論」(https://www.nri.com/~/media/PDF/jp/opinion/teiki/chitekishisan/cs201610/cs20161009.pdf)によると、在職期間が長い程、パファーマンスがいいが、逆に、次の世代では、劣化する。そこで、経営リレーモデルが重要だという。この結果からすると、社長の任期は、9年前後というのが、そのクリティカルな年限のようだ。
これは、日経の西條氏が論考しており、https://www.nikkei.com/article/DGXMZO05217680V20C16A7000000/大変興味深い。なお、米大統領やOECD議長の任期は8年、かつて日立社長も8年任期が多かった。
ただし、NRI論文でも、西條氏の論考でも、業種や事業特性との相関などは、触れておらず、これは、EV/EBITA倍率が、業種別で異なるように、そういう経営重心®「固有周期」と、社長の交替周期の関係の考察は重要であろう。
いずれにせよ、8-9年という年限が社長任期でクリティカルであり、EV/EBITDAでも、ジャパンストライクゾーンでも、10年以上では、外れるというのは、まさに10年一昔というが、深い意味があるのだろうか。それが3世代、30年を超えると、業界やプラットフォーマーまで、変わるように思う。