マネーの未来と絶対価値そしてベーシックインカム

 

この1078の二夜、NHKスペシャルで、マネーやAIについて、特集をやっており、御覧になった方も多いだろう。

 

第一集の話題は、ハイパーインフレ、地下経済、キャッシュレス、仮想通貨、時間通貨、などであり、ゲストには、「お金2.0」の筆者で若者に人気がある佐藤航陽メタップス社長も登場していた。

 

第二集は、AIやロボットと雇用の話で、ベーシックインカムにも触れられていた。ゲストは、「東ロボ」で有名なAI学者の新井紀子氏と、ソフトバンクの孫氏だった。

 

ちょうど、ノーベル経済学賞(正確には、ノーベル賞ではないが)の発表もあり、タイミングが良かった。ちなみに、今年のノーベル経済学賞は、エール大のウィリアム・ノードハウス教授とニューヨーク大のポール・ローマー教授が受賞、気候変動と技術各紙をマクロ経済分析に統合した成果が評価された。

 

通貨の候補

 

このうち、第1週のマネーの未来については、過度な金融緩和により、国家の信用が無くなる中で、何か通貨になるかは、極めて重要な問題だ。ブロックチェーンは、企業間取引などで、導入すべき技術だろうが、仮想通貨については、現状は、殆どが投機目的であり、流動性も薄く、通貨というよりも、コモデティ・ファンドのようなものだろう。マネーフローも不明であり、大量のマイニング計算機が必要で、その熱量の問題や、新しいアルゴリズムで計算できた場合のインパクトがよく分からない。

 

かつて、リーマンショック前後に、€に対抗して、米国によるNFTA圏の共通通貨として、「Amero」が検討されたことがある。金貨銀貨の換わりに、穀物・石油・貴金属などをバスケットとした兌換通貨だ。不況になったら、どんどんドルを刷って、それがバブルを生んだという非兌換通貨に対する批判が背景にあった。現在も、金融危機は起こっていないが、かつてない金融緩和の中で、$であれ、¥であれ、非兌換通貨への信用が薄らいでいるという点では似ている。

 

仮想通貨は、ハッシュ計算の有限性や希少性が信用の背景にあるが、これまでの、金ならオンス、石油ならバレル等、物理量が換算単位だったが、ビットが単位となる点では面白い。ただ、計算上は、発熱量がクリティカルであり、物理量かもしれない。番組で紹介された「時間通貨」は、有限で、時間が単位という意味では、面白いが、年齢で、時間の価値も異なり、交換性など課題も多いだろう。

 

さらに、通貨単位としては、その総和が、人類にとって、普遍性があり、人類の幸福を計測できるものが相応しいだろう。そこで、プリミティブなアイデアだが、

 

人類の幸福度=平均寿命(本来は健康寿命)×人口 と定義して、それを指数化したものを兌換対象

 

とするのである。寿命が伸び、人口が増えれば、GDP成長が幸福度と比例する。WTOか何かが、IMFと連携して、計算すればよい。過去は、金や銀、そして、石油や穀物(米俵の石高)、そしてデータ駆動社会では、ビットが、経済力を測る単位だが、理想的には、人の命や健康にすべきだろう。

 

ベーシックインカム

 

2集では、AIやロボットが雇用を奪うという話題から始まり、ケインズの有名なイノベーションと雇用に関する予想が紹介された。すなわち、これまでも、蒸気機関が肉体労働に取って代わるなど、イノベーションが古い雇用を奪うが、新しい雇用を生んできた歴史である。

 

ベーシックインカムも紹介されたが、仕事観は、西洋と東洋、特に、日本では、文化、価値感も異なり、難しい問題だ。かつての共産主義に近い印象だ。また、日本では、学生時代までの親の扶養と老人時代の年金生活の3040年は、ベーシックインカムと同様だ、あるいは、かつての高等遊民、GDP統計上は主婦もそうだ。人口では、半分近くが対象となるかもしれない。