GEの問題〜かつての優等生の落日

 

GEは、かつては、東芝はじめ、多くの日本企業がお手本とし、経営学者や、ビジネススクールでも、優良企業のケースとして、絶賛された。ちょうど、1年前ですら、ハーバードビジネスレビュー201712月号で特集された。http://www.dhbr.net/ud/backnumber/5a028f1d77656124a7000000

 

しかし、改めて、分析してみると、予想以上に厳しい。近因は、株主への過大な還元、真因はポートフォリオ、遠因は米国会計だろう。日経新聞でも、星氏や藤田氏の記事でコメントが引用された。

 

電機の著名アナリストで東京理科大大学院の若林秀樹教授は「GEは投資の回収期間が長い一方、環境変化の影響を受けやすいエネルギー関連に事業が偏っていた」と指摘する。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO37709730T11C18A1TJ1000/

 

「事業構成を長期型に組み替えるM&Aを進めたが、高いリスクに見合う自己資本を備えていなかった」と若林秀樹・東京理科大学教授は話す。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37922680Z11C18A1DTA000/

 

すなわち、「GEは金融危機で重荷となったGEキャピタルを縮小する一方、仏アルストムのエネルギー事業を買収するなど製造業回帰を探った。選択と集中へM&Aを重ねた結果、のれんが積み上がり、昨年年末ののれんは839億ドル。自己資本の1.3倍に膨らみ、今回の減損により自己資本比率は10%に落ち、さらなる事業の切り売りを迫られている。減損の理由は「高収益のサービス、長期の顧客関係、ガスタービン技術」の価値の見直しだ。石炭火力への逆風など誤算も重なった。電力のような10年、20年単位の事業はリスクを見積もる前提次第で価値が揺れる。突然の巨額損失は東芝でも見た風景だ。自己資本を厚くしておく手がなかったわけではなく、金融事業の縮小過程で資金を得ていた。しかし優先したのは自社株買いと配当だ。物言う株主からの圧力もあり、自己資本利益率(ROE)を下げない狙いもあっただろう」

 

 金融事業の位置づけが難しいが、売上12兆円で、資産は31兆円、自己資本3兆円(自己資本比率10%)、ノレン6兆円あり、これが減損すれば、既に債務超過である。https://jp.investing.com/equities/general-electric-balance-sheet

 

 さらに、FORM10kによれば、その割引率は、9-16%に分布、しかも、長期が多く、1%変わっても、10年なら10%の変化で、巨額な減損であり、かつての東芝のWH減損を想起させる。

 

負債側では、PBOも多いのも、それ以上にリスクであり、金融事業の位置づけや、リースなども含め、複雑な財務である。

 

背景には、ノレンを償却しない、米国会計基準による砂上の楼閣の如きB/Sが問題であり、その中で、キャッシュの使い方が、日経藤田氏によれば、20052017年に、M&A640億ドル、CAPEX440億ドル、株主還元1710億ドルであり、完全に、砂上の楼閣の中での財務である。

さらに、ポートフォリオの構築も違和感がある。同社のポートフォリオは、かつて、(ボスコン等のPPMなどに倣い、選択と集中を断行、2000年以降は、エネルギー、航空機、ヘルスケアにフォーカスした。