日立IRデー(6月4日)に参加、質問もした。10回目となる今回は、12時半からCEO挨拶コメントは質疑なし、その後、12時45分から、入れ替えがあったセクター別に、トップがプレゼンと質疑、最後は、西山CFO専務がまとめと質疑。セクターでは、新設のライフ(オートモーティブ、ヘルスケア、生活)から、小島副社長、ITの塩塚副社長、エネルギーの西野副社長と小田専務、インダストリーの青木副社長、モビリティ(鉄道、ビルや都市)のドーマー副社長。一部、参加できなかったところは、HPで視聴。
業績好調でトップもセクターの中身も不変の塩塚氏のITと青木氏のインダストリーに対し、ライフは新設で、かつてCTOとしてR&D改革と協創リード、Lumadaを立ち上げた小島氏が就任、モビリティは交通の鉄道のドーマー氏だが、ビル部門が加わった。エネルギーは、ABBパワーグリッドを買収、原発を抱えるが、西野氏がトップへ。
ROIC重視、10%を目指す、規模は再編次第
東原CEOの総括、2021中計は、既に5月10日に発表された通り。ポイントは、今後3年間で、M&A等投資(ABBグリッド買収分含め2-2.5兆円とCAPEX1.8兆円、計4-4.5兆円、R&Dも1.2兆円(前回は1兆円)、新たに重視するKPIとし、ROICを導入。2021年度目標は、具体的な売上数字はなく、成長率3%超、 調整後Opm10%超(なお、以下ではOP、Opmは全て調整後)、営業CFの3年間累計2.5兆円、ROIC 10%超、海外売上高比率60%超。他方、これまでKPIとして開示されたCCCは無くなった。他方、いくつかのセクターで、グローバルベンチマークの提示は評価されよう。
新しい日立の構造
この数年間、日立は、鉄道、都市、産業、流通、医療、電力などの顧客と向き合い、協創するフロント、Lumadaに象徴される横串のプラットフォーム、その下で支えるプロダクツという三層構造となり、今回、顧客も大きく5セクターに分かれ完成形に近づいた。R&Dでも、CSI、CTI、CER(CERは基礎研究なので、やや階層の意味が違う)となっている。
これを個々の顧客毎に見ると、経営層には、コンサルからIT、現場ではOTとプロダクツで、一気通貫、トータルシームレスソリューションで提供できることが強みだ。ライバルは、水平分業となっており、経営層には、コンサル&ITのみ、現場では、OT系ベンダー、プロダクツ系ベンダーと、別個に提供している例が多い。業界が標準化され階層構造が完成されている場合にはいいが、業界が発展段階あるいは構造変化にあり、微妙な摺合せが必要な場合は、難しいだろう。
ITセグメント〜「マル情」復活
ITでは、Lumadaを拡充、グローバル展開を加速。2021年度は売上高2.6兆円、Opm13%、ROIC15%、Lumadaは売上1.2兆円。他セクター向けLumada売上が4000億円あり、これを単純加算すると、ITセクターの総売上は3兆円となる。その先は、グローバルトップクラスのソリューションプロバイダーとして、売上高4兆円、Opm15%を目指すとコメント。
エネルギー〜ABBグリッドがカギ
エネルギーでは、2020年前半にABBパワーグリッド事業との合弁会社を設立、エネルギーソリューションのグローバル展開を行う準備を実施。2021年度は、売上1.7兆円、Opm10%、ROIC7.5%。サービス、グリッド、再生エネ、共に横ばいで、ABBパワーグリッドのPMIやシナジー効果がカギ。原発ホライズンは凍結との回答だが、不明確。
インダストリー〜プロダクト×OT×ITがall日立のモデルに
今回、このセグメントが最も明快で説得力があった。
2021年度目標は、売上1兆円、Opm10%、ROE10.8%。2017年のサルエアー社に続き、2019年4月に米JRオートメーション社を買収、ロボットシステムインテグレーター2社を加え、提案力・技術力・顧客基盤を強みに幅広い業界に多様なロボットソリューションを提供。なお、セクターでのM&Aなどの成長投資額として5000億円程度を想定。
モビリティセクター〜鉄道とビルは同じか
2021年度の目標は売上1.27兆円、Opm9.8%、ROE13.1%。サービス・保守比率は、2018年度11%→2021年度18%へ。ビル事業が売上高6200億円、OP630億円、鉄道事業は売上6500億円、OP618億円、英国向け車両供給の大型案件が一巡するものの、信号・ターンキービジネスやサービス/保守の拡大などでカバーする。
ライフは問題事業多く、再編か、日立ハイテクがカギ
新設で、課題のオートモーティブ、白物家電、ヘルスケアが統合されたが、次の成長に向けて、改革を進めていく。また、3分野共に、データを収集、蓄積する点が共通であり、Lumada活用が期待、相性もいいとコメント。2021年度、売上2.1兆円、Opm10%、ROIC15%へ。オートモーティブでは事業ポートフォリオ転換、生活エコでは、白物家電リストラ、ヘルスケアでは日立グループ力結集とコメント。
日立ハイテクとグループ再編
ヘルスケアについての日立ハイテクとの連携強化等の発言もあり、日経ビジネスでは、日立ハイテクを100%子会社化の憶測報道がある。https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL07H9F_X00C19A6000000/
既に、親子上場である有力子会社のうち、SI系子会社化、日立国際はMBOで、SPE切り出し、物流やキャピタルは切り離し、素材のかつての御三家も、ついに日立化成は売却方針であり、残るは日立ハイテク等、限られてきた。
2016年当時の再編ロードマップ
下記は、2016年当時の再編の見方である。日立のG再編は、2-3年遅れだが、方向性は正しいだろう。