今年からMOTで非常勤講師をお願いした戴志堅(日本名は中原、ザイン取締役、キャセイトライテック創業者)の授業でNRIのコンサルタントである李氏をゲストに招き、中国のイノベーションやBATHなどの企業についての最新のケースも交え、興味深いプレゼンがあった。中国のイノベーション政策は極めて優れており、優秀な帰国人材活用に加え、DXは国家主導、特に、よく指摘されているように、日本の新産業離陸前規制に対し、離陸後現実追認規制(これがDJI等の成功背景)、さらに、中国だけではないが、既存のインフラが無いこともプラスに効いている(キャッシュレス、配車など)。
何故、中国の製品サービスは類似なのか
その中での議論で、中国企業の多くは、同一のプラットフォームの上で、同様類似の製品やサービスを提供しており、日本企業が技術や製品サービス、場合によってはプラットフォームまで差別化するのと真逆であるのに、なぜだろうかという指摘があった。
これは興味深い論点であり、まさに、中国企業が大きくスケールするのは、同一のプラットフォームを使い、ユーザーインターフェースも含め、使い勝手も同じな製品であるからこそ、ユーザーは利便性があり、これこそがDX時代、プラットフォーム時代の常道だろう。
これに対し、日本は、ポーターの差別化戦略が好きであり、特に盆栽・箱庭文化の背景もあり、ニッチ戦略などに拘りがちであり、ゆえにスケールしない。見えない技術での差別化ならまだしも、ユーザーインターフェースが異なり、プラットフォームまで違えば、ユーザーにとって使い勝手が悪いことこの上なく、製品や市場が細分化されてしまう。
もちろん、それゆえ、中国は大勝するか死滅するか、多産多死で入れ替わりが激しく、日本は少産少死で長生きとなる。では、中国企業は全く差別化していないのか、というところが鍵であるが、そこで、指摘したのが、「中国は製品サービスや技術、プラットフォームでは差別化せず、ゆえにスケールするのに対し、経営や戦略(エコシステムの多様性や、サプライチェーン、価格など)で差別化する。これに対し、日本は製品やサービスや技術、プラットフォームでも差別化しようとし、故に、スケールせず、ニッチ市場があちこちにできるが、経営や戦略は、ワンパターンである」という仮説だ。まだまだ検証は必要だが、すぐ多くの事例が当てはまることは容易に確認できるだろう。