9月末に、中国の劉慈欣の長編SF小説「三体」を紹介した。それ以来、ことあるごとに、物理の三体問題や、小説「三体」を紹介しているが、日本では、両方とも、知っている方は僅かだ。小説はさておき、物理の三体問題については、理系出身やメーカーの方も多く、ハイレベルだが、意外と知られていない。
最近、MOTや経営学に関連し、アートとサイエンス、一般解と特別解、形式知と実践知、妄想と直感の関係を考えていることが多い。経済や経営では、物理の三体ですら解析的に解けず、初期値を入れるか条件を設定するしかないのだから、現実の多体問題(経済学では以前流行った複雑系)は、何かしら直感で初期値を代入し、前提を置いて近似して解くしかなく、それが実践知であり、経営力なのだろう。これは、ディープ・ラーニングにおける極値の問題と似ているように思う。似たようなことを、山口周氏が、著書「なぜ世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」にも同様の記述があり、しかも哲学者である氏が、三体問題について記しており、驚くと共に、我が意を得たりと感じた。