マスコミその他で、「日本は、キャッシュレスに遅れている」という論調がある。その根拠のベースとなっているのが、下記の表であり、韓国が90%近く、欧米も50%近いのに、日本は20%程度ということだ。この表を元に、経産省は、キャッシュレス化を進めている。ロードマップでは、2025年に40%、将来的には80%、2027年に日本全国どこでもキャッシュレス実現で素晴らしいことだ。
ここで問題は、その定義であり、分子と分母だ。例えば、給与振込なども含め、銀行口座振替や振込をどう考えるかである。キャッシュレス推進協議会のキャッシュレス比率18%の数字に対し、総合研究開発機構(NIRA)による全国3千人を対象にしたインターネット調査(18年8月実施)では、クレジットカード決済に加え、口座引き落とし等を含む個人消費のキャッシュレス比率は51.8%、また、金融庁公表の3メガバンクの個人給与口座からの出金数字では、現金の引出しは46%、クレジットカードや家賃、公共料金、ローン返済金などが口座から自動で引き落とされる口座振替(32%)に、インターネットバンキングやATMなどによる振り込み(22%)を合わせると、キャッシュレス比率は54%となる。同様の議論は、FACTAで、マネックス証券の大槻氏も論じている。https://facta.co.jp/article/201806021.html
経産省系のキャッシュレス推進協議会が、キャッシュレス比率が低い統計数字を選び、それを旗頭に政策を出すのは当然だが、日経新聞など、多くのマスコミが、この数字を中心に論じ、NIRAや金融庁の数字を取り上げないのは、忖度だろうか。将来が80%目標としても、足元が20%なのか50%なのかで、全く政策も異なるだろう。
スマホ文化は結論だけ表面的に見るし、最近の経営学論文でも、引用を、専門外の部分では、安易に使い、その大元の数字の定義を確認しない。論文審査でも、本文はチェックするが、引用先まではチェックせず、いい加減な引用や前提で、論理構成がされている場合も多く問題だ、
なお、日本で現金が、こうしたキャッシュレス化のトレンドと逆に、紙幣の流通枚数は増えており、不思議だ。この背景は日銀もコメントは無かった。また、現金流通が多い背景として、金融機関の店舗数が多いことを原因とみているようであり、それが銀行の店舗削減になっているかもしれない。ただし、店舗数と現金流通高は相関しているが、どっちが原因か結果かは分からない。