COVID19対応で、不足しているのが、マスクとアルコール消毒液、そして、PCR検査機と、その高速化の開発だ。PCR法のキャパ問題、特に、時間が数時間もかかり、クリーンルームが要る点は、2月10日に紹介している。https://www.circle-cross.com/2020/02/10/コロナウィルスを検査するpcr法の律速/
マスク生産
鴻海は、2月初めに、自社でも必要なことから、マスク生産を2月末に200万枚/日、その他、ペガトロンも内製対応。さらに、中国では、異業種3000社がマスク生産に参入、BYD子会社は、2月中旬から開始、2月末に、500万枚/日、消毒液も同様に5万本。その他、多くの会社が、日に100-200万枚という。
日本でも、鴻海傘下のシャープが、液晶の三重工場で、3月半ばにも1日あたり15万枚の態勢で生産を始め、同月中にも市場に投入する。政府による対策予算(全体では予備費から103億円は決定済み)がも活用、生産設備導入で3000万円程度が補助されるらしい。クリーンルーム等、3つの製造ラインから、最終的には10ラインで1日50万枚まで増産だ。ただ、鴻海や中国勢とは桁違いで気になる。
この他、最大手のユニ・チャームなど国内既存メーカーのマスク生産は、新型コロナウィルスの感染が拡大する以前は週2000万枚程度だったが、政府の補助も受けて足元では各社の合計で週1億枚ほどの生産能力があるとみられる。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56173900Y0A220C2EA5000/
このほか、異業種のエレコムが、消毒液セットを売っているのには驚いた。
キヤノンメディカルがLAMP法による新型検査機
最も注目されるのがキヤノンメディカル。2月26日にCOVID19検査機の開発を始めたと発表した。この他、武漢の病院にCT等を寄付している。https://jp.medical.canon/News/PressRelease/Detail/54707-834
加熱冷却を繰り返すため数時間かかるPCR法に比べて、一定温度で遺伝子を増やせるため検出時間が数十分で済む。RNAは、栄研化学株式会社が開発したLAMP( Loop-Mediated Isothermal Amplification)法を原理として、小型温増幅蛍光検出装置で検出する。小型で簡便、現場などでの使用も容易。日本医療研究開発機構(AMED)のプロジェクトに、過去のエボラでの事例を評価され、国立感染症研究所等と参画。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56032390V20C20A2TJ1000/
LAMP法と栄研化学
LAMP法とは、2000年に栄研化学が開発、標的遺伝子の6つの領域に対して4種類のプライマーを設定し、鎖置換反応を利用して一定温度で反応させることを特徴とする。http://loopamp.eiken.co.jp/lamp/
サンプルとなる遺伝子、プライマー、鎖置換型DNA合成酵素、基質等を混合し、一定温度(65℃付近)で保温することによって反応が進み、検出までの工程を1ステップで行える。増幅効率が高いことからDNAを15分~1時間で109~1010倍に増幅でき、また、極めて高い特異性から増幅産物の有無で目的とする標的遺伝子配列の有無を判定することができる。
特徴は、①2本鎖から1本鎖への変性を必ずしも必要としない。②増幅反応はすべて等温で連続的に進行する。③増幅効率が高い。④6つの領域を含む4種類のプライマーを設定することにより標的遺伝子配列を特異的に増幅できる。⑤特別な試薬、機器を使用せず、Total コストを低減できる。⑥増幅産物は同一鎖上で互いに相補的な配列を持つ繰り返し構造である。⑦鋳型がRNAの場合でも、逆転写酵素を添加するだけでDNAの場合と同様にワンステップで増幅可能。
既に、多くの分野で使われている。https://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan/73/2/73_2_296/_pdf
http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM1407_01.pdf
PCR法と比較して、1本鎖から2本鎖への変性反応が必要なく、60〜65℃の定温で反応が進行するという特徴があり、サーマルサイクラーのような機器(その代わりに、キヤノンメディカルの機器が使える)を必要としない。また、増幅速度が速く、特異性も高い(標的以外のものが増えにくい)ことから、反応液の白濁を見るだけでテンプレート(標的)が増えたかどうかを確認できる。
素晴らしい方法で、医学だけでなく、畜産分野でも知られているが、日本の栄研化学の成果なのに、どうして、もっと早く、導入されなかったのかが不思議である。
これが日韓の差かもしれない。マスコミ、特にTVでも全く専門家がコメントしないのも不思議である。
もしかしたら、今年のノーベル医学生理学賞は、栄研化学やキヤノンメディカルかもしれない。PCR法開発のキュリーマリスが1993年に受賞しているから当然だろう。
東ソーのTRC法、デンカ、ロシュ、富士レビオ
このほか、東ソー、デンカも、キットを販売した。東ソーは21日、新型肺炎の検査キットの開発を始めたと発表した。遺伝子の増幅技術を活用し、新型コロナウィルスの約50分以内の検出を目指す。通常の検査キットは実用化まで数年かかるが、厚生労働省からの情報収集などを急ぎ、早期の実用化を図る。検査対象者は、のどから検体を抽出して遺伝子検査装置で検査する。TRC法というRNA増幅技術でウイルスを検出する。DNAを増幅させるPCR法と比べて、短時間で検査できるという。病院などで検査できるようにする。検査キットでは、デンカ子会社のデンカ生研が抗体技術から感染の有無を判定する技術に取り組む。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55959640R20C20A2916M00/
このほか、ロシュ、積水化学、富士レビオなどの名前が挙がっている。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55696010V10C20A2EA2000/
政府の研究開発体制
今後、各社が一斉に開発を進めるが、医療機器メーカーでは、検査機関連で、日本電子、島津、日立ハイテク、等も可能だろう。なお、COVID19研究体制は2月13日に発表されている。https://www.amed.go.jp/content/000058931.pdf