組織の最適サイズに関しては、多くの研究や議論がある。特にイノベーティブな組織に関しては尚更だ。かつて、システムハウスに関して調査(日本システムハウス協会:JASA、現在、組み込みシステム技術協会)したが、30人規模を超えると収益性が落ちる傾向があり、業界内で言われていた「バス理論:社内バス旅行に1台で行ける規模が最適、コア創業者の種村良平氏提唱」を実証(下図では売上規模)した。これは、経営重心理論の固有桁数にも関連し紹介、業績規模拡大で融点や沸点のような閾値の存在を指摘した
産総研での調査(河尻耕太郎,他)では、論文生産性も一定規模を超えると急速に落ちると指摘がある。
総合電機メーカーのコーポレートラボ、「中央研究所」は全体では、1000人規模が多いが、実際には、数百人規模が地域で隔たれている場合が多い。野村総研がシンクタンクであった時代も、その程度であり、アナリスト・エコノミスト部門は100-200人程度、コンサル部門も同様であった。
組織管理の上では、イギリスの人類学者ダンパーによる研究が有名であり、チームサイズの限界が150人(ダンパー数)であるという。ソーシャルネットワーク上で親密にできる人の限界、さらに言うと顔と名前が気持ちよく一致する限界という。http://ex-career.org/mn_uehara_foruminterview_0202/
https://www.permaculturenews.org/2014/04/29/designing-authentic-community/
こうした組織規模とイノベーションに関しては、研究が少ないが、2020年1月に出版された「LOON SHOTS」(LOON SHOTSは、MOON SHOTSへの皮肉?)で、物質論での相図からのアナロジーで、イノベーション方程式を導出し、マジックナンバー150人と記している。
このイノベーション方程式は、最適人数をM、Sをスパン数(1人の管理人数)、Eをエクイティ比率(業績が報酬に直接結びつく比率)、Gを給与アップ率(定昇)、Fを組織適合レベル(自分のプロジェクトでなく、ゴマすり・忖度、調整など政治的活動に使う割合とすると、次式で定義されている。
M=E*S²*F/G
通常、5<S<10、0<E<100%、0<G<30%(普通は5-10%)、
同著では、S=6、E=50%、G=12%、F=1の例を挙げて、M=150人としている。
また、S=10、E=50%、G=33%、F=1という最近の欧米の例で、M=150ともしている。
そして、相図では、このM=150が相図線で、組織が政治的になるか、LOON SHOTS的になるかの臨界だと示している。
さて、日本では、どうだろうか、かつての典型的な日本企業あるいは役所的なら、S=7、E=10%、G=10%、F=1とすると、M=49。2階層しかない。マネジメントもしたアナリスト部隊なら、S=7、E=50%、G=20%、とすると、M=122である。あとは、Fをどう置くかだ。
いずれにせよ、Eが高くなり、Gが低ければ、組織はプロジェクト結果に傾注するし、Eが低く、Gが高ければ、目の前のプロジェクトより、出世や組織政治が重要になるだろう。
総コストとプロジェクト成功確率とリスク報酬を考慮
ただ、このイノベーション方程式には課題があり、組織のコストを反映していない。GとEのバランスであり、人数や階層でも異なる。また、Eに関して、プロジェクトの成功確率や、Eが高い場合のリスクを取った場合の反映をどう置くかが重要である。