先日のシンポジウムでも、テーマにした目利きであるが、今回は、技術の目利きに関して、記したい。アナリストという予想屋の仕事をする上で、株価予想の前に業績予想があり、その前に市場規模や業界構造の予想があり、そこでは、ライバル関係にある企業や、技術について、どちらかを選択しなければならない場合も多い。
こうした技術予測のケースが増えていき、回数を重ねると、自分の判断軸も明確になり、インタビュー先のネットワークも増える中で、自分なりのフィルタができ、立派な権威でも、外れやすい方もおり、いろいろな条件、状況で、向き不向きもある。そうして、目利きの精度が増していく。そして、専門家の有無によらず、自身の専門でも、他でも、目利き力のある専門家のネットワークが中心になる。一見、専門家でなくても、その方なりの判断軸や目利きのノウハウがあり、それも吸収して、さらに、自身の目利きネットワークが、時間をかけて、精度を増していく。
多数決だとか、権威だからではなく、自分なりの軸と腑落ち感、そして、自分なりのシナリオや前提を自覚し、自分の判断に責任をもつことだ。
間違った場合は、反省し、理由が前提やシナリオか、判断軸か、ネットワークのノードの問題かフィルタのかけ方が悪かったのか、認識し、必要に応じ、即座に朝令暮改でも変える必要がある。そうした理由を意識して検証していないと、何が良くなかったかが曖昧になり、予測の精度が上がらない。
多くの経営学者も、専門家にインタビューし引用するが、択一の判断をする際に、自身が腑に落ちるか否かというより、自身の仮説に合う内容や権威の意見を採用するようだ。それでは、予測の精度は上がらないだろう。半導体市況に関して、アナリスト時代、商学部を出た先輩が一緒に取材に同行して、専門家(業界関係者)の意見が全く異なるので驚いていた。どうも、MOTでも、社会科学系教員のゼミでは、インタビューすれば、検証になると認識している場合が多いようだが、対立する意見の場合、どう処理しているか、中身を無視して、統計処理している例が多いようだ。
当たるネットワークは当たるノードを引きつけ、外れるネットワークは外れるノードを引きつけていくということだろうか。後者は、90年代以降の国家プロジェクトや綜合電機に多く、朝令暮改を良しとしない傾向があるように思う。話題になった技術で、多くの専門家やマスコミが明らかな欠点を指摘して否定する技術が意外と成功し、皆が高評価するが実用化しない理由が判然としない技術ほど、蜃気楼のように実用化が遠のく場合も多い。目利きは目利きを呼び、ダイナミックで、視界がクリアな印象だ。