有名なグラフは真実か~スマイルカーブと普及カーブ

多くの会社の中計やコンサルティングで当然のこととして使われているスマイルカーブと、マーケティングで有名なイノベーター理論の普及カーブがあるが、本当だろうか、実証、検証されているのだろか。

 スマイルカーブとは、台湾Acer 社の創業者スタンシー氏が、PCの付加価値の説明をするため、90年代に提唱、縦軸に収益性や付加価値を取り、横軸に、会社ならば、バリューチェーンの中で、上流から下流への事業の種類、あるいは、川上から川下への各産業をとった場合の、U字型グラフをさす。

 マーケティングにおけるイノベーター理論として有名な正規分布のようなグラフも同様である。もともと、スタンフォード大のロジャーズ教授が、「イノベーション普及学」で1962年に提唱した。発展途上国での社会科学的アプローチから実証した。普及が概ねS字カーブを示すのは、当たり前の話であり、その本質は、イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードとなることである。S字カーブを微分すれば、これまた、概ね正規分布となるのも当然だ。

社会科学、経営学、マーケティングでは、しばしば、大御所の仮説を理論とし、それがグラフである場合は、その形や、形状から判断される数字が、あたかも不変の真実のように、扱われる。社会科学、特に、経営学でいう理論と自然科学での理論は、意味合いが異なるのだが、MOTでも、真面目な技術系の社会人学生は、文系アカデミック教員から理論と言われると、自然科学における理論と認識してしまう。また、コンサルタントから、そういわれると、技術者も、真理だと勘違いする。罪なことだ。

 



[1] ロジャースはもともと、例として、数字を挙げたに過ぎないという

[2] 同僚のマーケティング専門家の教授にも、他の事例や、実証グラフがあれば、教えて欲しいと、1年ほど前に聞いたが、やはり無いようだ