働き方改革の中でジョブ型などの議論が多いが、関連して、慶応の鶴光太郎教授が日経経済教室で日米の人的資源管理(HRM)を比較、論じている。ポストコロナの働き方、本当に新しい?: 日本経済新聞 (nikkei.com)
鶴教授が紹介しているのは、コーネル大学マイケル・ウォルドマン教授によるサーベイ論文、「伝統的HRM施策群vs革新的HRM施策群」という視点だが、ここで、興味深いのは、米での伝統的HRM施策群が、古典的ジョブ型雇用であること。すなわち、ジョブを狭く定義、徹底した分業、人を交換可能な部品のように考えている発想である。革新的HRM施策群は、日本の80年代の製造業を参考にし、社員のスキルやQCサークル、OJTも取り入れたものである(下表、日経より)。これを見ると、②から⑦は、まさに日本と同じである。ここで異なるのは①だけである。
ここで思い起こすのが、R&Dでのリニアモデルに対するクラインモデルである。この頃、日本はむしろ、リニアモデルあるいは、基礎研究重視で中研ブームであった。クラインモデルは、日本の家電のケーススタディから、ノンリニアモデルを考案したという。ところが、その後、20-30年の時差をもって、日本はリニアモデルから、ノンリニアモデルに移行しつつある。アップルのサプライチェーンモデルも、任天堂を参考にしたという。
米は、他国の良さを丸事コピーでなく、分析して、いいところを吸収している。日本は、安易に欧米礼賛で、丸事コピーだが、米モデルを輸入する場合、それが、日本の逆輸入であることを知らずに、行っている場合も多い。そうして、日本の良さがどんどん失われていく。
R&Dノンリニアモデル、OJTやQC活動はそうだろう。おそらく、CF経営も日本の半導体の競争力を潰した。今、ガバナンス改革、金融制度改革、教育制度、DXですら、そうではないかと思ってしまう。
米に最も学ぶべきは、失敗の総括、丸暗記・丸事コピーでなく、自分の頭で考えることなのだが。それだけはできないのが不思議だ。