「次世代半導体製造技術開発センター」あるべき姿

 日経はじめマスコミが、「次世代半導体製造技術開発センター」設置につき報道している。日経によれば、米国との窓口になる研究開発拠点を年内に新設、試験的な製造ラインを置き、2025年にも国内に量産態勢を整備できるようめざす。年末までに新たな研究機関「次世代半導体製造技術開発センター(仮称)」を立ち上げ、産総研や理研、東大などと協力して拠点を整えるようだ。新研究機関には企業の参加も募り。①設計②製造装置・素材の開発③製造ライン確立の3分野で研究を進め、量産可能段階では内外企業に技術供与する模様だ。日米、次世代半導体の量産へ共同研究 国内に新拠点: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 大きい方向性は、著書はじめ、これまで主張してきた通りであり、喜ばしく、経産省はじめ政産官学の努力に敬意を表したい。その上で、ここからの実装が重要だ。

 日本のR&Dの問題点は、ストークスの4象限で、パスツール象限(原理探索と実用化の両方を狙う)が弱くなったことだ。元来は、大学は、基礎研究のボーア象限、企業の研究は応用と実用化を狙うエジソン象限であり、電電通研や産総研の前身の電総研等はパスツール象限であったし、理研も、大河内正敏先生は生産技術の泰斗でもあり、パスツール象限を狙い、それが理研コンチェルンに発展した。しかし、90年代以降、電電通研は解体、大学はボーア象限どころか「研究のための研究」象限となり、産総研や理研がボーア象限へ移行してしまった結果、パスツール象限が皆無となった。産総研はパスツール象限へ移行すべきとの論調もあり、努力しているが、実業界から見れば「基礎研究」である。

 今回、設置されるべき「センター」は、ビオンド2nmを狙うパスツール象限を狙うべきで、それが、「研究所」でない名前となった背景だろう。