学生時代から、業界構造に関心がある。東芝かどこかの研究所から東大教授になった方の著書だったと思うが、電子工学の何かの本で、イントロダクションか終章かだろうが、真空管から半導体になると、信頼性が向上し、修理などが不要になる上、組立から設備投資型になると記載があり、衝撃を受けた。まさに、技術の特性が産業や企業の収益性を決めるわけで、それは、野村総研でも、心に残っており、半導体産業でのメモリとロジックの差異、TFT液晶産業離陸で、ブラウン管やSTN液晶とTFT液晶の構造を分析した背景になっている。これは、業界が垂直統合から水平分業になる際にも理解を早めた。よく言われるように、WintelはPCを設計した以上に、PC業界構造を設計したのである。海外では、技術の本質を知るトップが、業界構造を設計している。この点が、日本の経営者に欠けている気がする。
こうした考えは、MOTでも、企業産業分析予測という授業で、「業界構造設計」という項目を入れている。イノベーションが起きつつある時に、どう自社に優位に、業界構造を変えるか、どういう業界構造なら自社に優位か、を分析、M&Aや提携案も含めて、提案してもらうのである。これは、グラデュエーションペーパーでも、スマイルカーブを決めている業界構造の要因である寡占度合やQCD要求を分析、自社に優位にするための方策などに生かしてもらっている。さらに、近年は、IMECとASMLが好例だが、研究コンソーシアムが、業界構造を決めている場合もあり、これもテーマになった。
業界構造を決めるKPIは、寡占度合、垂直水平度合に加え、ネットワーク科学の知見もあるだろう。構造は業界だけでなく、この国の行く末にも重要であり、デジタル列島進化論での情報通信網や工場立地、サプライチェーン構築が鍵であり、5W1Hで、マクロ、産業、教育、経営、R&D等々、この国の構造の設計が重要である。それを意識して書いたのがデジタル列島進化論の2章や3章、6-8章だ。
国も、デジタル列島改造に向け、産業アーキテクチャを、デジタル政策、具体的には、IPAを主体に、まさに、日本列島改造論のベースとなった「全総」untitled (mlit.go.jp同様の、「デジタル全総gijiyoushi.pdf (cas.go.jp)」を考えているようだ。これは凄いことだ。デジタル社会の実現に向けた重点計画本文 (cio.go.jp)
IPAでは、アーキテクチャデザインセンターがあり、日立の副社長、IT部門統括だった斎藤裕さんが、トップである。
組織がイノベーションを起こす安くする一つの方法は流動性の向上であるが、これを、MOTのゼミ配置でも、試みている。MOTでのゼミ配置では、1年次の担任制でいったん、学生の教員配置が決まると、2年のゼミでも、同じ教員を選ぶ傾向があり、必ずしも、学生とゼミ指導教員の最適マッチングができてない可能性があり、人間関係が固定化されてしまう。
ドラフト制
そこで、学生も教員も、お互いに選び合える、いわば、プロ野球ドラフト会議のような仕組みを考案して実行してみた。
厳しい結果
MOTでは、修了ペーパー(正式には、グラデュエーションペーパー)の追い込みが、1月中旬の締め切りを前に、年末年始だが、大詰めとなっている。新MOTでは、一般解を目指す技術経営論文、特殊解を目指すビジネス企画提案があるが、わがゼミでは、企業派遣が多いこともあり、後者が多い。
もっとも、せっかくの機会なので、両方とも、論文的な体裁を重視し、問題設定、先行研究、仮説、検証、結論、といった順番で執筆しなければならない。テーマは、対象と切り口からなるが、それぞれに、オリジナリティが必要だ。
MOTで最も重視しているゼミでの修了ペーパー指導は3年目になる。通常の講義でも、学生と接するが、ゼミは、質・量ともに、レベルが異なる。
ゼミは2年間で全人格での知のぶつかり稽古
教員と学生で醸成し毎年異なる雰囲気
社会人学生の問題点
最近の日本人の中堅会社員
文章経験
国語力とプログラミング
教員も書けない
国語教育軽視
MOTでの再教育
アルバックの技術説明会が12月17日13時半よりウェビナーで開催され質問もした。内容は、「メタルハードマスク(MHM)技術と次世代半導体プロセス」については、半導体事業部の近藤事業部長と岩澤部長、「次世代リチウムイオンバッテリー」についてが、FPD・PV事業部の磯部長、その後、まとめて30分質疑応答、多数の質問。
EUV向けMHM工程でスパッタ技術を高評価
LiB向け金属リチウム蒸着箔
FPDから半導体とEVへ
コロナ禍や米中摩擦で明け暮れ、サプライチェーンが混乱した2020年だったが、足元は2021年に向けての期待感やサプライチェーン乱れを意識してか、ハイテク市況は強含みだ。
2020年はセット台数上振れ、2021年は期待
メモリはDRAMスポット急騰
ファウンドリがタイト
LCDが急騰
レアアースやレアメタル
少し前なら、米での流行を早く取り入れ、先手を打つというのは、ファッションだけでなく、テクノロジーでも、確実性が高い戦略であった。
テクノロジーでは、ハイテク輸入商社であった、イノテックや東陽テクニカなどが、その代表例であろう。これは、アカデミックや出版でも、同様で、米の現地で、これという論文や書籍を、早めに読み、翻訳されるまでの時間差を利用することで、日本で先駆者となり、大家となれた。
昭和の昔から、経営の若返りは日本企業において、重要な課題であった。野村グループでは、「Keep Young」が常識であり、40歳台で役員は珍しくなかった。金融業界は、グローバルでも、そうであり、30歳位までで、最優秀層は、経営トップか、自ら起業になる場合もある。
シニア向けマーケティングや施策を
AIやロボットがシニアを活躍させる
大学の定年
経営学は、人をどう動かすかに関する学問であり、社会科学ではあるが、心理学や脳科学などの知見も取り入れられている。古くから、人の心や感情についても、モチベーションやモラル、インセンティブなど、多くの知見がある。
ネガティブな感情や個人間の恨みなどは無視
しかし、どちらかというと、ポジティブな感情が中心であり、ネガティブな感情、恨みや個人同士の憎悪などは、あるいは個々の相性については、それほど論じられていないようだ。
経済学でも、人間は経済的利益を追求する存在だとの前提であり、組織論でも、社員は、全体としての気質は考慮されていても、個々の個性や相性、恨みや妬みは捨象されている。実際の組織をマネージする上では、こういうネガティブな気持ちを、如何に減らすか、消せるかが重要だ。
ケーススタディ
腐った蜜柑やリンゴ、木乃伊取りが木乃伊
組織マネジメントの前提は性悪説か性善説か
大学マネジメント
恨み辛みを残さないのは市場主義か
既に広く報道されているが、AKMの生産センター 第二製造部 (兼:旭化成マイクロシステム株式会社 延岡事業所)が10月20日夕に火災、24日昼に鎮火した。従業員の人的被害はないが、物的損害および業績等への影響、復旧については、不明としている、業界全体への影響は極めて大きそうだ。
半導体製造工場の火災について (状況のご報告) | インフォメーション | ニュース | 企業情報 | 旭化成エレクトロニクス (AKM)
被害大は4Fか
今回、被害が大きかったのが、4Fであり、全焼の可能性があり、5Fも、天井の一部崩落など被害が大きく、テスト工程に影響。2Fは被害が少ないようだ。なお、状況は不明であり、要注意。
AKM概要
AKMは、旭化成のマテリアル領域事業の一部、エレクトロニクスは2018年度の売上1517億円、OP78億円、CAPEX274億円、Dep144億円、R&D115億円、2019年度からは非開示。
主要製品
AKMの主要製品は、TCXO制御IC、音声処理制御IC、ADC/DAC、電子コンパス、磁気センサ等。
サプライチェーンでのグローバルニッチトップの反省と教訓
2020年は、世界の工場である中国でコロナ感染が広がり、さらに、米中摩擦で、一層、サプライチェーンの問題が再認識された。そして、今回、国内のAKMでの火災は、非常に重い。
次期米大統領はバイデンで決まりと、マスコミも報じており、私も含めて、多くの方もそうだろうが、実際には、裁判とかの話でなくとも、必ずしもそうではないようだ。
米では憲法が大統領選挙を規定
ファーウェイには徹底締め付けだが
半導体M&A
金融インフラ力
金融庁は、銀行による中小企業の事業支援を促す融資改革の中で、独自技術・顧客基盤など無形固定資産を評価し、一括して担保とする政策を議論する。見えざる資産の議論もあり、期待したいし、これが、本来の金融の大義だろう。「事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会」の設置について:金融庁 (fsa.go.jp)
「事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会(第1回)」議事次第:金融庁 (fsa.go.jp)
中小の無形資産、一括で担保に 独自技術・顧客基盤を評価 金融庁、融資改革で支援強化 :日本経済新聞 (nikkei.com)
もちろん、今の銀行、金融側に、そうした評価ノウハウがあるかどうかは疑問である。しかし、この制度の導入で、とりあえず、見えざる資産が、金額換算され数値化される意味は大きい。そこで、ダメなら、減損すればいい。その試行錯誤の中で、ノウハウも溜まり、精度も向上するだろう。
尊敬する知人から、日本の電機・半導体の逆転の可能性、チャンスを考えるに関して、野中郁次郎先生の「戦略の本質」を勧められた。有名な「失敗の本質」の姉妹作ともいえる名著でそこそこは売れたそうだが、不勉強で知らなかった。「失敗の本質」は、爆発的に売れ、世間で話題になり、小学生時代に、「太平洋開戦史(伊藤正徳)」を何度も熟読した他、大東亜戦争に関しては、かなりの書籍を読んだ小生も、こういう視点があったのかと、大いに感銘を受けた。
戦略の本質
この「戦略の本質」は、日本の戦いではなく、毛沢東の反「包囲討伐」戦、バトルオブブリテン、スターリングラードの戦い、朝鮮戦争、第四次中東戦争、ベトナム戦争の詳細なケーススタディから、逆転を可能にした戦略について分析、最後に戦略の本質についての10命題を提示している。社会科学と自然科学の本質の差にも触れ、興味深い。
3つの逆転のケーススタディ
日本の電機や半導体の逆転は、簡単ではないが、米中摩擦等で、世界のサプライチェーン大変化の今が、好機でもあるだろう。そこで、この20年間で、小生が知る大逆転と言える、下記3ケースから、「戦略の本質」のフレームワークを参考に、それを業界全体の大逆転に結び付けれるかを考えていきたい。
人間には、短期記憶が得意な人と長期記憶が得意な人がいるという。前者は、例えば、一瞬にして、本を読んでも覚えていて、丸暗記や一夜漬けも得意で、試験秀才などもそうだろう。後者は、覚えるのには時間がかかるが、ずっと昔のことを覚えていて、かつ、それが、新しい記憶と連結して、深い知恵となるような方もいるだろう。頭がいいと言われる人にも、意外と、昔に勉強したことは忘れてしまい、実務と遊離する人もいる。
大学は、5年に1度くらい、大学基準協会というところによる調査を受ける。金融業でいえば、金融庁検査のようなものだ。
・・・・・
PDCAというが、まさに、Cが重いわけだ。大学や役所は、PとCのウエイトが大きいで、DとAがなく少ない。これが、民間あるいは適者生存の競争社会ならば、Cが小さく、中には、スタートアップでは、アジャイル重視で、Pも少なく、DとAが多い場合もあろう。
・・・・
世界がどんどん変化する中で、PDCAでなく、市場原理を取り入れ、PDM(Mはマーケット)の方が、教員や事務だけでなく、学生にもプラスではないか。
経営重心論では、企業や産業で、サイクル、タイミング、時定数、時間感覚が異なることを述べた。自身が属した、野村総研、野村証券、ドレスナークラインオートベンソン、JPモルガン、みずほ、と会社を変わる毎に、時定数(固有周期)を調整するのに苦労した。アナリストとして担当した同じ電機でも、半導体と重電で全く異なった。アカデミックは、時定数の長短というより、時定数が揺れ動き、変数だ。
個々に、経営者、役所系、教員、事務方、そして、社会人学生とメールでやり取りするときも、全く、タイミング、時定数が異なる。
日々、忙しい方と面談をする場合、日程調整は最も重要である、それゆえ、常時、メールは見ていて、日程の返事などは最優先する。
菅内閣は、4日の記者会見で、経済政策で、二酸化炭素削減に2兆円基金、デジタル化推進へ1兆円確保とのことだ。新型コロナ:首相、脱炭素支援へ2兆円基金 デジタル化には1兆円 :日本経済新聞 (nikkei.com)
実際の詳細は不明だが、グリーン2兆円、デジタル1兆円、が技術革新に使われる。グリーンでは、ソーラー、風力など再生可能エネルギーが思い浮かぶが、実際には、半導体の貢献が大きいだろう。
それには、発電、送電、機器など利用側の省エネというふうに分けて考察するとよいだろう。まずは、二酸化炭素によるエネルギーを如何に使わないかだが、これは、コロナ禍で、まさにテレワークで、飛行機や列車による人の移動が減っているが、輸送と通信のエネルギー比較になる。輸送が減っても、通信やデータセンターの消費電力量が増えてはいけない。
日本電子の上期決算説明会が27日午後、リアルで実施された。ただ、コロナ禍でもあり、オンラインで参加。11月30日にHPで。オンライン開示、顔出しで、栗原会長が挨拶のあと、大井社長がプレゼン。ただ、質疑のリアルな内容は非開示。
上期は過去最高、コロナ禍で通期は据え置き
上期決算は売上2番目、利益以下は過去最高。10月27日に上方修正され、売上500→493億円、OP9→23億円、NP2→18億円、通期1093→1090億円、OP40→51億円、NP30→38億円の通り。
新需要や新規事業も離陸へ
この11月に、2020日立国際電気のソリューションフォーラムがオンデマンソで開催され、アクセスしてENJOYした。
飽きさせない時間と内容
映像と音声によるプレゼンで、セミナー、顧客との協創事例紹介、ソリューション提案に分かれ、セミナーは中堅クラスによる10分程度のプレゼン、協創事例は顧客の声など5分程度、ソリューション提案は若手クラスによる5分程度のプレゼン、視聴者側にも配慮され、飽きさせない適度な時間で、コンパクトにまとまっており、多様な人財も参加していて、素晴らしい試みだった。
プレゼンでは、巧拙ではなく、面構えや話しぷりの印象と内容が相関している印象を持った。
3つのセミナーでは技術力とビジネスモデルを再確認
セミナーでは、5G/AI が創る世界 ~皆様の夢を実現する協創パートナーへ~、5G/AI ソリューションについて ~5G/AI 時代のベストパートナーをめざして~、スマート社会実現に向けた技術開発 ~ DX を加速する映像・無線技術 ~であった。同社が、SENSE(映像)、CONNECT(通信)、THINK(情報)、5G、AIという関連性でソリューションを提供できる強みを再確認した。また、5G協創ラボで、4G、5Gの基地局、電波暗室を備え、ローカル5G等には欠かせないサポートができるだろう。
6つの協創事例
顧客との協創事例では、日立建機のi-コンストラクション、明電舎のIoT水害対応システム、マンホールアンテナやマンホールカメラの事例、かずさDNA研究所では、植物成長見守りセンサーとローカル5G導入事例、ユニ・トランド社では地方公共交通を担うバス運用システムでの画像データ活用、葛飾区では、防災行政無線の事例で131カ所の個別対応力、など豊富で多様な実績が紹介された。
ノキアで4Gや5Gを生産するオウル工場の事例は、デジタルツイン、インダストリー4.0的な工場の紹介で、ワイヤレス化で毎週需要に応じ変更できるフレキシブルな生産体制が紹介され、興味深かったが、日立国際との係り方がやや不明であった。
9つのソリューション提案
ソリューション提案では、建設現場でのクレーンのリモート操縦、工場ラインでのHMDを使ったリモート立ち会い作業、時刻同期ソリューション、防水防塵の堅牢なLTEカメラ、立ち入り困難な設備管理ソリューション、AIによる危険行動察知AIカメラ、防災での避難など発令判断サポート、鉄道車上プラットフォームの中で、ホーム監視システム、山間部など可搬無線システムによる電波不感地帯対応、リニアセルレーダーシステムによる空港滑走路異物感知であった。
5G時代はルールが変わりそう
今回、5G時代では、これまでの4Gまでと異なり、競争を左右する技術や戦略が大きく変わり、プレイヤーや業界構造も様変わり、そこで同社が大きな機会を持つことを確信した。
先日、エネルギー、光触媒に関する高名な研究者の話を聞いた。研究実績は素晴らしく、長期の研究への情熱、見通しが不透明な中での研究リーダーシップなど参考になる点も多かった。しかし、振り返って、腑に落ちない点も出てきた。
何故、日本にはパスツール象限が少ないか
自身の研究テーマの転進
研究のライフサイクル
村田製作所のIR説明会が27日WEB開催に参加した。プレゼンは、中島社長、質疑対応は、竹村常務、石谷常務の3名、質疑は5Gなど技術動向と今後のポートフォリオ展開など。これまで村田会長によるプレゼンも全ページの説明ではなく、要所のみだったが、中島社長も、全40ページのうち、8ページを10分で説明、1時間弱を質疑に充てた。
ムラタの価値創造プロセスとコアコンピタンス
プレゼンでは特に触れられず質問も無かったが、資料1-12ページまでは、11月に統合報告書で掲載されている内容とほぼ同じであるが、昨年までのIR資料では無かったものであり、注目していいだろう。
5Gやクルマで成長、ソリューションビジネスへ
苦労したメトロサークと電池が寄与
新電元の2QWEB説明会が11月13日に開催、参加した。プレゼンは鈴木社長だが厳しい表情、TEAMSによる、初のライブ配信だが、クリヤだった。
決算動向
なお、同社は、期初、本決算では、コロナ禍により、業績見通しは非開示だったが、8月13日に、見通しを開示、11月6日に、再度、業績修正、売上、OPは上振れ、赤字縮小だが、飯能工場減損などリストラ費用14億円やグループ子会社の繰延税金資産取崩もあり、NP赤字拡大。
上期決算は売上340→353億円、OP赤字28→20億円、NP赤字37→50億円、セグメント別では、デバイスはクルマが厳しく在庫調整で赤字、電装もコロナ禍で需要低迷と操業停止が響き大幅減益、他方、その他は、通信向け堅調で黒字化。
通期は、売上750→753億円、OP赤字40→31億円、NP赤字52→72億円、ただ、上期のみの反映で下期は据え置いた上、リストラ費用も織り込んでいない部分もありようだ。
構造改革
今回のポイントは、以前から計画されていた老朽化した飯能工場から、朝霞事業所へ開発機能を集約、この効果が大きそうだ。
メルコの上期決算がWEB(非同期片方向、顔出しプレゼン)で開示された。プレゼンは、全体を松尾副社長、食品は、取締役で、シマダヤ社長の木下氏。
上期は売上623億円、OP41億円、10年ぶりピーク更新。コロナ禍対応では、テレワーク80%目標、緊急事態宣言解除でも50%目標継続、現在は60%。
ITがWiFi等テレワークで19%増収、66%増益、テレワークやGIGAスクール文教向けを取り込み、その他の空気清浄機、AMD-CPU等が大きく貢献。データ復旧サービスやアパートWiFiは、コロナ対応のため、対面営業自粛でWEB受付だが堅調。
食品はコロナ禍で業務用減収だが経費削減で増益、外食用は大きく減ったが、家庭用が5k(健康、簡便、高品質、経済性、買い置き)で伸びる。
通期は、引き続き、非開示。
日経BPから、この10月に出た「世界最高峰の経営教室」を読んだ。MOTでもお世話になった、MIT教授のクスマノ先生も登場、理科大MOTについても言及している。その他、海外の有名な経営学の学者17名が登場、日経BP副編集長だった著者との対談や最新の研究成果などが紹介されており興味深い。
具体的には、5Fで有名なマイケル・ポーター、最近、「両利きに経営」で注目のチャールズ・オライリー、オープンイノベーションで有名なヘンリー・チェスブロー、マーケティングの神様のフィリップ・コトラー、AIのマイケル・オズボーン、ヘンリー・ミンツバーグと豪華であり、経営学の基本をおさらいすると同時に、最新のアカデミックの潮流を展望できる。注目すべきは、日本国内のマスコミやアカデミック等の論調と必ずしも同じではないということだろう。
今回、はっとしたのは、MITポーゼン上級講師のステークホルダー論、ESGに関して、深い洞察をされ、日米が両極端であることを指摘している。オックスフォード大のメイヤー教授は、パーパス経営に関連して、企業目的は社会課題を解決しながら稼ぐことだと指摘、フリードマンを批判、英アンケートで、ビジネスリーダの世間の信頼度が低い(他にも、政治家、広告会社、ジャーナリスト、不動産、銀行員、寄付団体幹部、労組幹部、キャスター、僧侶)ことを指摘、日本が世間を向いており、株式持ち合いは悪くない、等と述べている。さらに、終章のミンツバーグ教授の資本主義論、MBA批判は強烈だが、驚くべきことに、日本を評価している。メイヤー教授、ミンツバーグ教授は、米では企業が業績を伸ばしたが、国民は不幸で分断された、他方、日本では企業業績は停滞だが、国民はそうではない、と見ているのである。
3年程前に、MOTの社会人学生から、どうして検索が上手いのかと聞かれ、当時は、普通にキーワードを入れているだけなのに何故だろうと不思議だったが、最近納得した。スマホで広告ニュースを見ている学生と、PCで、多様で長時間、しかも、グーグルだけでなく、複数のサイトで、日本語、英語、たまに中国語(わからないが)で検索して、どんどんPCが賢くなっているからだ。
台湾のIT天才と言われる、オードリー・タンは、意外なことに、PCは使うが、スマホを使わないという。スマホの奴隷になって自由を失うからだそうだ。「台湾の天才」オードリー・タンが語った「私はなぜスマホをつかわないか」(語り)オードリー・タン,構成)クーリエ・ジャポン) | 現代ビジネス | 講談社(1/3) (ismedia.jp)
全く同感である。スマホを持って以来、タダのニュースを見ていると、どんどん、似たようなカテゴリーばかり増え、ニュースと思ったら、本や商品などの宣伝だったりする。これでは、ニュースを見ているのか、広告を見ているのかわからない。
GAFAなどのプラットフォーマは、独禁法次第であり。イノベーションにはいい面もあるかと思っていたが、自分自身がスマホで、こうした経験を経て、考えが変わった。リナ・カーン氏の指摘通りではないか。新たな「独占」、巨大ITにメス 独禁法の常識覆す: 日本経済新聞 (nikkei.com)
我々の知の選択肢・自由が狭まれているおり、大衆はどんどん愚民化され、いわば、脳や心の食物においても、自然食品でなく、人工食料で家畜化されている。そして、どんどん良質なコンテンツが駆逐されていると確信した。実際、本は少し前の雑誌であり、雑誌もどんどん劣化している。大衆の志向は、多様化するどころか、巧みなマーケティングか洗脳で、画一化されているのではないか。
必要で欲しい情報はどこかにはあるが、GAFAの存在が、そこへの到達の障害となっている。自身で本を探し、論文を読み、相当、努力しないといけない。
日経の23日報道では、中国の社債不履行が増え、4割が資金難という。清華大学系の紫光集団が、16日までに社債13億元を償還できず、北京大学系IT系の北大方正集団など多数の大手も債務不履行のようだ。中国の社債不履行、4割が国有企業 支援縮小で資金難 (写真=ロイター) :日本経済新聞 (nikkei.com)
既に、18日の日経でも、紫光集団の件を大きく報じ、半導体国産化に影響を及ぼしそうだとコメントしている。中国・紫光が債務不履行 半導体国産化に影響も :日本経済新聞 (nikkei.com)
紫光集団は、中国だけでなく、理系では、世界的にもトップ水準。半導体では、シーメンス系のキマンダを買収、また、傘下には、NANDのYMTCもあり、64層3Dは量産、128層3Dも量産に入りそうで日本等と3-5年の差と、かなりのレベルまで追随している。サムスンやTSMCの技術者なども転職。さらに、DRAMも強化している。この他、中国No1のデータセンター会社やオムニビジョンの関連もあり、これらは未上場である。更に、インテル等とも連携はしており、複雑である。
既に、台湾の金融情報サイト『理財網』は、2020年9月13日付に、清華紫光グループが累積債務で危機に陥る恐れがあるして動きがあると報じている。
なお、中国の半導体政策では、国家ICファンドは、JCSTEA会報2017年1月号によれば、10兆円以上あり、紫光集団もその一つである。
ただ、このタイミングで、マスコミが報道しているのが鍵であり、米中摩擦で、中国の半導体政策を警戒していることから、何らかのメッセージ性や、中国政府が紫光集団のトップに対し、何かが、あるのかもしれない。
さらに、債務が膨れ上がっているのは、中国だけでなく、日米も同様であり、人の話はできないだろうが、政策面で注意が必要だろう。
11月10日11時より、エレコムの決算説明会テレコンが開催され、参加した。プレゼンは、葉田社長、業績の詳細説明は、田中CFO。従来のリアルの説明会に比べ、葉田社長のプレゼンは、短めだった。
葉田社長
経営学者受けするケイパビリティと戦略
財務での開示とKPIチェック
業績は慎重、来期に向けEC強化
CKDの決算テレコンが11月13日から開催、参加。自身のPCトラブルで、十分に集中できず。質疑は通常ある市況や工場稼働に加えて、EVや二次電池関連、日機電装とのシナジーに関するものあり。
上期業績は売上482→499億円、OP15→24億円、NP11→16億円、上振れ着地、自動機、機器共に、良かった。機器の下期予想は、半導体、自動車、医療医薬、FPD、二次電池いずれもプラス、特に半導体が改善、地域別は東アジアがややマイナスの模様。
通期は、売上965→1000億円、OP32→49億円、NP23→34億円、自動機、機器、共に上方修正、ただし、自動機がh/hで、受注横ばいながら、減収減益、利益率悪化は違和感。質疑でも指摘なし。
トピックスとしては、中国医薬品市場対応として、自動機械で、毎分3000錠の薬品包装機を現地生産で投入、2022年に10億円販売計画、半導体では北米新拠点。また、協働ロボット、自動組立ライン、アフターコロナ時代を見据えた生産ラインの紹介。
去る11月5日16時より、SUMCO決算説明会テレコン参加。いつも通り、橋本CEO会長から総括と市場環境について、特に今回は、基地局や5G影響、米中摩擦影響など関心が高い話題につき、独自分析紹介。決算概要は瀧井副会長、質疑は市況動向など。今回、興味深い質問で、ライバルと比べ、同社は3社合併で、プロセスの微妙な差が、多様性の強みでもあり、これがファウンドリの多様な要求に対応できるが、他方、統一でコスト下げられない弱みでもあるようだ。
決算と市況
決算3Qは売上730→716億円、OP80→66億円、NP45→34億円、台風影響のマイナスはあったが、他で挽回もあった。12φはロジック好調、メモリ回復、8φはクルマ等で軟化。スポット弱含み。ただ、90%は長契であり、影響は小さい。また、ポリッシュはやや軟化だが、エピはタイト。
4Q計画は、売上725億円、OP75億円、NP50億円。12φはロジック好調、メモリ堅調。8φもクルマ向け急回復、スポットは横ばい。メモリは在庫あり。ポリッシュは多そう。エピは不足か。
市場環境
島津のオンライン説明会が11月10日に開催され、参加した。プレゼンは、上田社長、セグメント別、地域別、トッピクスの順番で、質疑も業績中心だが、コロナ禍で減収ながら増益、OP以下は過去最高。
業績は上方修正
上期業績は売上1788億円、OP196億円、NP139億円、減収増益は、コロナ禍で費用限と収益認識基準変更のため。セグメント別では、主力の計測が減収増益、ミックス改善、OPM14%、産業、航空も増収増益。医用が国内の病院採算悪化で減収減益。
通期は売上3400→3650億円、OP220→380億円、NP160→270億円へ上方修正。計測では、ヘルスケアで、キヤノンメディカルと提携、新型コロナ関連医薬が期待、1000人計画等、科学技術重視の中国向け需要増。産業では、半導体関連のTMPが上期に引き続き好調。航空はリストラモードであらゆる可能性を検討のようだ。
根っこの力
11月11日15時より、リアル説明会に参加、質問もした。3密を避け、全員にフェースシールド配布など、コロナ対策は徹底。プレゼンは、杉本社長、質疑も多数。
コロナ対策
冒頭、コロナ禍影響コメント、テレワークを増やし、オフィス2/3へ、日本人エンジニアの出張費ゼロ、中国などローカリゼーション成功など、ピンチを活かし、プラス面も多いようだ。
業績は回復傾向
上期は、受注は、中小型OLED工場新設や、リピート案件計上もあり、199億円と増加に転じ、売上282億円、OP29億円、NP15億円。なお、Q1受注取消案件の在庫評価損計上。粗利率7.6%低下は、この影響であり、これを除けば30%維持。減収減益ながら、前Q4ボトムに回復。受注は2019年以降、四半期変動はあるが、フラット傾向。受注残は、ピークからは、半分の500億円の水準だが、LT短縮の関係であり、安定傾向だろう。
通期業績は、売上540億円、OP60億円、NP30億円で不変。セグメント別は、製造装置減、検査装置や、半導体等が増加。
中期戦略は半導体と部材サービス
イノテックの説明会11月10日16時半より、オンライン開催に参加、質問もした。前回は、オンラインながら、片方向だったが、今回は双方向で実施、初の試みだったが、円滑であった。棚橋CFOがプレゼン、質疑は小野CEO、大塚専務が対応。発言やプレゼンの時には、顔出し。質問は来期に向けテスター需要動向、新顧客等、米中摩擦など
業績は本体健闘で前期と中身が真逆
上期業績2Qは、売上149億円、OP4.6億円、NP2.9億円、増収減益、単体がテスター好調、EDAも堅調で増収増益、大幅黒字化だが、STArが、コロナ影響によるサプライチェーン乱れでパーツ仕入れ問題もあり、赤字転落。全体的に、前上期と真逆。脱商社・メーカー化でR&DやDEP増。
通期は不変。売上312億円、OP16.7億円、NP11.7億円。テスター好調、Vテクとの中国シナジーも奏功。STArも、サプライチェーン問題は解消。通期は黒字だが、クルマ、鉄道、FA等が、R&D活動は低調で弱そう。
テスター期待
EDAは米中摩擦なし
サンケンの決算2Qテレコンに参加、今回のポイントは、アレグロ上場のインパクト、その後の方向性であり、質問の関心もそうだった。
業績は上ブレ
2Q決算は、売上681億円、OP赤字、NPはリストラ特損27億円あり、赤字49億円。1Q時点の公表値より、デバイスのクルマ向けで9%、産機・民生で10%の上ブレ。2Qはq/qでクルマ+15%、白物+15%、同社の在庫も、中国エアコン市中在庫も通常へ。
通期計画は、売上1440億円(デバイス1255億円、パワー222億円)、OP6億円(デバイス31億円、パワー7億円、相殺消去32億円)、NP赤字70億円へ上方修正。アレグロの上場益等300億円ありそうだが、諸費用あり、織り込まず。アレグロは上場後も54%維持でデバイスOPの大半を稼ぐ構造。
アレグロ上場とGSユアサへ社会システム譲渡によるキャッシュ使途
国内非オーナー系だがM&A巧者
去る11月5日に、ニコン2Q決算がWEB開催。プレゼンは馬立社長。決算は徳成CFO。日経では、リストラ中心に報じられたが、説明会とは異なる印象だ。
業績上期実態は改善傾向、リストラ前倒し
決算上期は売上1650→1756億円、OP赤字400→赤字466億円、評価損・廃棄損除けば赤字216億円と184億円改善、NP赤字250→赤字315億円、米Berkeley社評価益58億円を反映。2QのOPは赤字195億円が実質は35億円黒字。セグメント別では、映像は、ミラーレスやプロ趣味モデルがコロナ禍で想定以上に回復、実質OP82億円改善だが、タイ生産設備固定資産減損156億円あり。精機もFPDで据付開始や前倒しでOP実質52億円改善、他方、半導体の在庫評価損92億円あり。当該製品は開発用として活用。ヘルスケアはOP27億円、産機もレンズ子会社減損32億円除けば23億円改善。
通期は、売上4200→4300億円、OP赤字750億円、NP赤字500億円だが、一時費用やリスクバッファーを除くOPは赤字550→赤字404億円と150億円程度改善。
来期は全セグメント黒字を示唆
映像事業はプロ趣味向けを80%程度まで上げ、この岩盤ユーザー層を中心の売上で黒字を出すまでに目途。工場はタイへ移管。精機は収益源を多様化、4000台の稼働装置向けサービスとEUV関連の計測検査装置などを強化。ヘルスケアは黒字化目途。産機も期待。全体では、海外人員1.5万人を6割水準、国内9000人は成長分野へシフト。
ただ、今回は、新規分野のコメントは少なかった。
パナソニックは13日に楠見常務が2021年に社長CEOに昇格、津賀社長は代表権のない会長、長栄会長は特別顧問となる人事を発表。また、2022年4月に持株会社制へ移行、社名をパナソニックホールディングスへ変更する。https://www.panasonic.com/jp/corporate/ir/pdf/jn201113-2.pdf
日経報道その他で、記事も多い上、楠見氏は、直接の面識はないため(津賀氏は、かつて、日経BP開催セミナーでパネラーとして同席、多少、議論もし、直接の面識はあった)、特段、記事以上のことを知っているわけではないが、以下の点を指摘したい。
MOTで3年前に「技術系経営者論」という授業で、社長のキャリアパス、社長の再定義、そのリーダーシップなどを論じた上で、各社の次期社長の予測方法を示し、演習で、ソニーとパナソニックなどについて発表してもらった。楠見氏が有力だと考えていたが、学生の中にも見事に当てた者がいた。
今回、ホールディングス制にしたのは、重厚華美だが中身の無い社外役員の考えそうなことだ。電機大手の中では、この5年では、パナソニックは業績最低、住宅やクルマなどやたら事業を広げ、経営重心論からも最悪レベルだ。そこまで広げたということは、当然、ホールディングスしかない。
去る11月4日16時より通期決算がリアルとWEBで同時開催、WEB参加。プレゼンは五味社長から、また新事業の社内カンパニー説明を新社長の高野(こうの)氏から。五味氏は10年歴任だが、3.11に就任、今回コロナ禍での交代となる。今回、CFOの十時常務も退任し、後任は日立から日立物流の執行役常務北米のトップ経歴のある柏氏。体制も変わり、輸入商社から製造業に転換するのかもしれない。
業績はコロナ影響
業績2020年9月期売上231億円、OP12.5億円、政策保有株売却益7億円あり、NP14.3億円。コロナ影響が国内は下期が納期遅延、海外は上期計画比半減、下期は回復。クルマ系、海洋/特機、ライフサイエンス等が影響。分野別には、5Gとローカル5G、自社製品SYNESIS、次世代電池など好調。OPでは、ITで特約店との関係、EMC大型アンテナで顧客の倒産対応で、それぞれ商品評価損を計上した影響が数億円規模で大きい。為替動向と粗利率は、105-110円では45%が通常だが、下期に上記の評価損があり、40%を割り込んだ。
2021年9月期は、売上250億円、OP21億円、NP15億円、IT系は5Gとローカル5G、自社製品SYNESISが好調、機械振動などはクルマのR&D回復弱い、物性エネルギーは次世代電池が拡大、EMC/大型アンテナは海外大型物件、ソフト開発支援はゲーム等、海洋特機は防衛強化で予算確保、ライフサイエンスは医療の投資が遅延。
70歳までの雇用シニアマイスター制度
興味深い取り組みは、70歳までの雇用を実現するシニアマイスター制度、65歳までは、マイスター制度を2021年4月より導入したことである。同社のような特殊な分野の技術者は経験も重要であり、注目したい。
社内カンパニー「ワン・テクノロジーズ」
今回、次期社長の高野氏がカンパニープレジデントを務める、ワン・テクノロジーズ・カンパニーの紹介があった。
次の10年は
この社内カンパニーのトップだった高野氏が、次期社長であり、その成功体験を、他にも展開、自社製品を増やしていくのだろう。
去る13日15時半予定、開示遅れで45分開催となったJDIの上期決算説明会WEB開催に参加した。マスコミ投資家アナリスト合同。プレゼンや質疑対応は、代表執行役会長兼取締役で、いちごアセットのスコットキャロン氏、代表執行役社長兼CEO菊岡氏、執行役兼CFO大河内氏、執行役員CMO永岡氏、執行役員CTO仲島氏が入れ替わり説明。これまで継続してあった縦型蒸着OLEDの話題やJOLEDの件等は無し。更なるコストカットで現状売上延長2800億円程度でも黒字化可能との説明や見通し保守的と見解に対し、マスコミ、アナリスト双方から厳しい質問。
業績は厳しい
業績2Qは、売上1100-1200億円→1118億円、OP赤字30-0億円→赤字29億円、OLED設備減損(後工程関連と説明)とシャープへの白山譲渡損など131億円計上。スマホのOLED採用比率拡大でLCDは苦戦、車載も厳しい。
去る11月5日15時半より2Q決算と新中計説明会がテレコンで開催、参加し質問もした。プレゼンは藤田社長。決算集中日だが質問多数だが社長が丁寧に対応。新中計ではコア製品が詳細紹介。
業績上期は上振れ、通期は不変
決算上期は受注125億円、売上230→233億円、OP12→16.5億円、NP8→11.4億円、FPD前工程、SPE前工程が順調、共に後工程はやや低調。利益は製造コスト削減奏功。通期は不変、SPE前工程順調、後工程では延期が10月受注、FPDは前工程の受注が見え、後工程は動きなし。コロナもあり、固めか。
新中計はSPE強化
新中計に際し、2017-2019中計を振り返ると、3年累計では、受注1570→1510億円、売上1545→1495億円、OP72→96億円、NP41→62億円、ROEも9%に対し12%と、利益以下は大きく上振れは評価されていいだろう。
2020年度以降の新中計は、「ものづくりから価値づくりへ」という中で、①グローバルニッチトップ製品拡大(SPEでグローバルニッチトップ、FPDで主要サプライヤ)、②利益率向上、③SPE分野拡大であり、2022年度の売上510億円、OP51億円、ROE13%であろう。3年累計では、売上1450億円、OP119.5億円となり、売上は横ばい、利益は改善。収益性の高い半導体系が増える他、サービス比率も向上。他社との提携では、新中計期間中に売上の15%を占める。
アルバック中計との比較
これを同業のアルバックと比較すると、市場では、両社とも、FPDからSPEへのシフト。
ハイテクを使った工場見学や社内教育が注目されている。大学でもそうだが、オンライン教育は、知識の習得などには有効であり、どんどんハイテク利用で、教育の質向上は不可欠だろう。
総合商社では、文系社員向けにAIやDXを行うようだ。プログラミングの経験がなくても、AIを学べ、体感できるようだ。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65089790W0A011C2TJ1000/
ここでの注意点は、二つあるだろう。第一に、プログラミングあるいは計算を伴うような分野は、本を読み、話を聞くだけではダメで、自ら手を動かし、実習することだろう。プログラミングをし、問題を解く中で、理解が進む。習うより慣れよ、だろう。理系で、演習や実験、製図などが、多いことや、運動や芸術も同様だし、論語の素読などもそうだろう。
第二は、AIやDXの本質は、人間や経営であり、ITだけでない。DXで経営改革をするためには、経営の全体像を俯瞰し、サプライチェーンやバリューチェーン、財務の仕組み、組織論が不可欠である。AIでも、心理学や脳科学が必要だろう。最近、IT系の社会人がMOTに来るのはこうした背景もあるようだ。
研修というと、どうしても、教室で座学をイメージするが、特に、AIやDXでは、知識だけでは、すぐ忘れてしまうし、実習、演習、しかも、経営全般について体得しないといけない。
オンライン工場見学の取り組みも出てきた。キューピーやキリンが、VRを活用し、食品の製造工程を見学できるそうだ。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66236420U0A111C2MM0000/
子供が、モノづくりに興味を持つことは素晴らしい。しかし、あくまで、全体の一部を非同期かつ片方向で見るだけであり、「工場見学」と言われると違和感がある。
工場見学の重要な点は、綺麗なラインを見るのではなく、むしろ、全体を俯瞰して、汚いところや問題点まで含めた現実を見せることでないか。見学用のラインの片隅に、積まれた在庫や、不良の張り紙、壊れた機械、そんな面も見て、脇道にそれた質問もして、工場という存在を全身で理解するべきだと思う。
昨年末に東芝加賀工場を見学したが、実際のクリーンルームに入るのではなく、ラインの一部をVR見学しただけだった。いやVR見学というより、VRによるラインのCG見学であった。それでも建屋や後工程のラインを目視で身、匂いを嗅いだのは大きい経験だった。
大学でも、コロナ収束でVRによる実習や実験が導入されており、それは予備学習としてはいいが、実際の現場で、薬液がこぼれたり、爆発したり、あるいは、血が出たり、という現場のカオスの状況で場慣れしたり、うまく対処する経験にはならないだろう。
DX学習やVR工場見学でも、いきなり、そちらに行くのではなく、デジタルツインのように、まず、ありのままをデジタル化して、その上で、取捨選択して、教育効果を考えるべきだろう。
ここのところ、半導体のM&Aが再び盛り上がっているが、そこで、見えてきたのは、海外での高い評価と国内での低い評価だ。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO65704660Q0A031C2TJC000/
10月27日に、AMDが、FPGAトップのザイリングスを3.6兆円で買収、2015年にFPGA大手のアルテラを買収したインテルに対抗できる。
10月29日には、マーベルが同業のインファイを1兆円で買収。また、Nビデアは、アームを4兆円以上で買収する。SKハイニクスは、インテルのNAND事業を1兆円で買収。これはキオクシアの2倍のバリエーションである。
さらに話題になったのが日本のサンケン電気傘下のアレグロ10月29日のIPOだ。時価総額4000億円程度と同時点のサンケンの5倍である。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO65708370Q0A031C2DTB000/
日本の総合電機では、コングロマリットディスカウントが有名であったが、むしろ、その本質は、ジャパン・ディスカウントではないか。
キオクシア等も、いっそ、米での上場を目指してもいいかもしれない。
次期大統領がバイデン氏になりそうで、米中摩擦緩和が期待されている。これに対し、米中摩擦には、貿易問題と派遣争い問題があり、後者はオバマ時代からであり、変わらないと見ている。また、基本的には、民主党政権は日本に厳しく、円高になる傾向があり、注意が必要だろう。
他方で、大統領選挙結果を前に、ファーウェイ向けデバイスは、米政府から許可も下りている報道が出ている。既に、インテルに許可があり、話題になったが、サムスンのパネルやソニーのCMOSセンサなど、トップシェア企業であり、ハイエンドでないものは、条件次第のようだ。
10月27日の報道では、サムスンに対し、ファーウェイ向けパネル供給を承認したが、パネルだけで、コントローラICは未承認。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65510830X21C20A0FFJ000/?n_cid=DSREA001
10月29日の報道では、ソニーに対し、画像センサの輸出許可が29日におりたという。ただし、こちらも、どの範囲かは不明である。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65617710Z21C20A0916M00/
また、決算説明会で驚いたのは、EDAである。
日本でも、経産省や関係省庁が水面下で尽力しているようであり、期待したい。米は、何がダメで何が大丈夫なのかが明らかにしてほしいものだ。どうも、現状では、ファーウェイ向けは非最先端チップ、ファーウェイ以外は、EDAなども含め、当面は問題ないようだ。
部品メーカーの決算では、ファーウェイ向けは減ったが、それ以上に他の中国メーカー向けが増えた模様であり、スマホ市場の見通しを上方修正している。ただし、員数やメモリ容量サイズなどは、多少は影響しているようだ。
去る10月30日15時半より、村田WEB説明会に参加した。プレゼンは、中島社長、竹村常務、他、質疑は、業績に加え、米中摩擦関連や、5Gにおける技術優位性の議論が多い。
業績上振れ
業績2Qは、受注4757億円、売上2586億円、生産4120億円、操業度90-95%、OP802億円、NP603億円、カーエレ急回復、スマホも季節性回復。Q/Qでは品質関連費用計上あるも大幅増益、Y/Yでは電池減損198億円の反動で増益
セット見通し変更と米中摩擦
5Gに向けて
11月に入り、日本でも再び、コロナ禍が広がっている。陽性者は、9月以降、200-300で推移してきたが、10月中は3%台で推移していた陽性率が、11月に入り、4%を突破、11月9日には、久しぶりに、5%となった(7月7日に5%、8月6日には7%となり、その後、下がり、8月22日に5%割れ)。
ソルバーロジスティック曲線では、明らかにS字曲線から外れつつあり、このままでは、収束しないか、1人が何度も感染するということになり、異なったモデルが必要だろう。
かつて、インテルのムーア氏は、「インテルはPCメーカーだが、PCは儲からないので、CPUをやる」と語り、同様に、ロームの創業者の佐藤氏は、「ロームは、後工程の装置が強いが装置は儲からないので、後工程のチップをやる」と語った。また、半導体の装置メーカーは、半導体部門から分かれた場合もあり、かつては、半導体メーカーは、装置を内製していた。つまり、関連する製品を作れる技術はあるが、ビジネスにするかは、収益性次第だということだ。また、2000年以降の水平分業の中で、ファブレス/ファンドリ、OSAT、EMS、テストハウス等の新しい業種が台湾を中心に発展した。
後工程でのOSATやテストハウスと装置メーカー
優れたテスターメーカーならば、自社のテスターで、テストハウスになりうるだろう。
前工程でのファウンドリと装置メーカー
前工程であれば、デバイスがファブレス/ファンドリに分化、モジュール構造化している場合は、AMATなどの装置メーカーが本気になれば、多くの工程のファウンドリは可能だろう。
ファブレスとEDA
ファブレスでは、EDAはどうだろうか。優れたファブレスは、EDAもある程度内製できようが、EDAのケイデンスやシノプシスがファブレスである程度の地位を築くのは時間がかかるだろう。そもそも、ファブレスと異なり、HOWでなく、WHAT(何を作るか、設計するか)だからだろう。
ディスプレイと装置メーカー
ディスプレイではどうだろうか。以前、経済教室でも指摘したが、もはや日本では、ディスプレイメーカーより装置メーカーの総和の方がモノづくりは強いだろうし、故に、生産技術は既に中国や韓国、台湾が上だ。
これからの業界再編と技術移転とモジュラー
5G時代の到来で、通信キャリアがインフラ投資を本格化する。日経報道では、ソフトバンクとKDDIは今後10年間に基地局整備などに、それぞれ2兆円を投じる。SBは、現在1万局を2021年度に5万局、2025年度までに20万局、2030年度までに35万局。KDDIは、6Gも含め、2021年度までに5万局という。これらには、4Gからの転用もある。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65792470T01C20A1MM8000/
ドコモは、2023年度までに1兆円、その後も毎年数千億円をかけ、2021年6月で1万局、2022年3月に2万局とペースが遅いように見えるが、4Gからの転用は少ないという。
なお、国内では、総務省がキャリア毎の数字を公表している。ドコモ、AU、SBなど5社の保有合計は、3Gで29万局、4G以上で57万局であり、おおよそ90万局となる。
実際には、これに加え、ローカル5Gもあり、基地局数は、一層増える。このように、5G、更には、6Gでは、基地局が増えるため、基地局間を、光ファイバー等で繋ぐ必要がある。これが、ドコモのIOWN構想だが、まさに、大中小の多様な基地局と光ファイバー網が敷き詰められる。
また、CO2削減に向け、政府は再生エネルギー普及を後押しするため、地域間送電網を複線化する。マスコミでは、発電系の風力、太陽光、等の議論が多いが、より重要なのは、送電線、蓄電なども含めた送電網である。
去る10月30日9時より、ローム上期決算WEB説明会に参加、質問もした。プレゼンは、松本社長、資料が一新され更に充実。質疑は、業績市況、米中摩擦の他。EVに絡んでSiCに関するものが多かった。
業績上振れ
上期業績は、売上1600→1680億円、OP70→126億円、NP73→125億円、減収減益ながら大幅上振れ、これを受けて、これまで未定とされた通期を売上3400億円、OP230億円、NP190億円、上期はy/yで全分野がマイナスだったが、下期は、産機がプラス、車載や事務機でマイナス幅縮小。CAPEXは、SiCの新棟、キャパアップでなく、建物老朽化対応、開発ツール等。
市況動向
月次の売上トレンドは、5月を底に、6月、7月は急回復、8月やや中弛みで、9月好調、例年はピークアウトする10月が上昇、その後は、例年通りの季節性を見込んでいる模様。
SiC強化
新体制での戦略では、産機アップやパワー/ASSPへ注力、モノづくり強化。営業戦略では、体制を刷新.
モノづくりBCP強化
今回の重要な点は、モノづくり戦略で、機能別体制強化で、前工程、後工程、品質のモノづくりと、LSI、パワー、汎用、オプトの事業本部のマトリックスで一体化、更に、SCM本部、IT統括本部を新設。
去る10月29日17時より、アンリツWEB説明会に参加した。決算は窪田CFO専務、5Gの最新動向を濱田社長。質問は決算と5G動向が半々。
上期業績は、受注540億円、売上522億円、OP98億円、NP71億円。主力のT&M事業が5G商用化、データセンター需要好調、PQAはコロナ影響もあり減収だが増益。2Q受注はコロナ禍でもT&Mはy/y微減。2QのT&M売上内訳は、モバイル55%、ネットワークインフラ30%、エレキ15%で、ネットワークインフラが構成比アップ。通期は据え置き、売上1100億円、OP175億円、NP135億円。やや固めか。引き続き、当面、5Gの恩恵は大きそう
5G動向
5G動向は、中国先行、米中摩擦で欧州減速、韓国はミリ波技術課題で減速、米はサブ6ギガ転換で追い上げ、中国は、加入者1億人以上、基地局41万局、7月新規端末62%を占め、国産メーカー端末シェア75%。韓国は加入者680万人だが、繋がらない等不満多く、年内ミリ波サービス開始延期。米国は、ベライゾンがミリ波で伸び悩み、Tモバイルがサブ6ギガで加入者増。
去る10月31日、11月1日と、東工大(ZOOM開催)で、研究イノベーション学会(この分野では国内最大、35年の歴史)が開催され、約100件の発表があったわが理科大MOTから発表は、若林3件(うち、単著2)、若ゼミ5件(学生と若林が共著)、他1件。
学会発表は、コロナ問題等のホットイッシューと、科学技術の経営や政策に関わる課題の他、研究・開発の計画・立案・調査・管理・評価等、および関連する人材・組織・社会等に関する研究報告、事例報告など恒常イッシューがある。具体的には、①技術経営(戦略・R&Dマネジメント)、②技術経営(教育・育成)、③技術経営(事例・ビジネスモデル・事業化)、④知的財産、⑤産官学連携・地域、⑥研究・イノベーション政策、⑦イノベーション・起業、⑧国際(競争と協調)、⑨人材、⑩分析と評価、⑪科学と社会、⑫その他からなる。
当日、若ゼミは、D会場(技術経営、R&D)だが、若林より「R&D費の適正水準~日米テック企業比較」、「アーキテクチャー摺合せ・モジュラー論と経営重心の関係」、「製造装置業界の垂直水平競争力分析」、学生から「特許共著者ネットワーク分析による企業ノーベル賞受賞者とその組織分析」、「半導体と装置の価値は競争か共創か~パッケージとチップボンダーのケース」、「リードユーザーの先進的なニーズを元にした新規事業化のケーススタディ」、「アフターコロナにおけるものづくり企業の雇用制度についての考察」、「日米産業比較による参入障壁とイノベーションの相関についての検証」。後日、座長や参加者から、我がMOTは、レベルが高くエクサイティグだと、褒めて頂いた。
学生は、一部、自身の理系専門分野以外は、このような学会での発表いわば他流試合は、初めてであり、頑張って取り組んだが、いい経験になったようだ。このセッションだけでなく、午前中の他のセッションも視聴したが、自分たちのレベルが高いことも自覚し、大いに自信にもなったようだ。いわば、校内大会、校内模擬試験では、上位だったが、全国大会、全国模擬試験では、果たして、どうだろうと、いうところが、全国大会でも上位であることが認識したようだ。さらに、学会参画の意義や面白さが体験でき、知的刺激を大いに受けたようだ。
NIDECの上期決算説明会が10月26日17時にWEB開催され、参加した。プレゼンは永守会長、関社長であり、車載のところは関社長が中心に説明、このコンビも板についてきた印象。
決算は上期の売上7000→7518億円、OP550→692億円、NP400→488億円、と大きく上振れ、全世界での回復や車載も改善、WPR4効果もあり。年間も売上1.5→1.55兆円、OP1250→1400億円、NP1000→1050億円へ。
今回の注目点は、車載に関し、E-Axleの製品ライフサイクルである。これまでも、2025年が分水嶺と指摘してきたが、それが明確になってきた。今回は、成長期の2030年だけでなく、成熟期の2050年まで製品ライフサイクル理論のS字カーブに沿った説明が為された。成長を加速するのは電池コストダウンと各国の環境規制強化である。
コロナ禍では、GOTOキャンペーン、アベノマスク配布、特定給付金、など、様々な政策が試みられ、多くが失敗とは言えないまでも、裏目に出ている。これらは、良く言えば、性善説、厳しく言えば、大衆の知恵を甘く見て、頭でっかちで考えられたものだ。特に、ITと連動して、システムの隙をついた犯罪も増えている。ネットゆえに、心理的な罪悪感が無くなるのか、ネットでは人格が変わるのかもしれない。
オレオレ詐欺なども高度化しているし、ネットでの偽りの銀行口座をクリックさせて、振り込ませる手口なども、巧妙になっている。その知恵や努力を正業に、向けてくれればとも思う。
そもそも、世の中の暗黙の前提が、社会を治める側が、常に賢ければ、知力で劣る犯罪者を捕縛し、犯罪も未然に防ぐことができるだろう。実際、かつては、学校や社会で知力に劣る失敗した人間が犯罪者となる場合も多く、世の中は成り立っていた。あるいは、治世側の役人が民間人より知力で上回れば、政策は上手く行く可能性が高くなろう。
しかし、最近は、知力で優れるが、教育の過程かどうか不明だが、正義感や道徳感がなかったり、この社会に失望した若者が、ぐれていき、その異才をITや金融などで発揮する場合が多い。技術の進化に政治や法が追いついていない場合、その隙を、「見事に」ついて、成功し、正義とは言えないが、違法でもなく、金を、正業の者よりも、稼ぎ、それをマスコミが煽れば、社会や民主主義の前提が崩れる。
オムロンの上期決算WEB説明会が29日16時から開催され参加した。プレゼンは、日戸CFO、質疑応答は一部、大上氏、竹田氏が対応。
上期上振れ、通期を上方修正
上期決算は売上3013億円、OP247億円、NP192億円、減収減益ながら上振れ。コロナ禍でも、マスク製造ラインや人工呼吸器、紫外線照射ロボ、5G基地局向けX線基盤検査装置など、機会を捉え、ヘルスケアでは体温計が80%増など増収増益。IABも中国回復を享受、19%増など。
通期は、上期実績を受け、売上5900→6200億円、OP300→400億円、NP165→240億円、IABとヘルスケアが上振れ。下期はなお慎重だろう。
アフターコロナのヘルスケア事業はプラットフォーマへ
今回、高く評価したいのは、ヘルスケア事業である。ゼロイベントを目指す中で、血圧計を拡大しているが、コロナ禍で、一層、遠隔診療などが進行する。
OKIの上期決算と新中計のWEB説明会が29日16時から開催され、参加、質問もした。プレゼンは、鎌上社長、質疑応答は一部、星CFOが対応。決算集中もあり、質問は少ない
通期でリストラ費用を織り込む
決算は上期赤字だったが、もともと上期は開示なく、コロナ禍と下期偏重傾向なので、想定範囲だろう。通期は、売上、OPは不変、前回未定とされたNPをリストラ費用40~50億円(グロスで60億円、多少の特別利益がある見込み)を織り込み、赤字75億円。リストラは海外販社、プリンタ等の模様。
中計2022年度
今回の新中計は、クリティカルなモノづくり・コトづくりを通して社会課題を解決するためのキーメッセージ「社会の大丈夫をつくっていく」は明確だが、やや、ESGやマテリアリティ等のバズワードが気になった。
2022年度の業績目標は、売上4650億円、OP200億円、NP120億円、ROE10%、自己資本比率30%は、2019年度と大差ないが、中身が変わり、また、新中計ではCAPEXやR&Dも強化であり、その先行投資負担もあり、また、社会実装に時間がかかる案件もあり、その後の飛躍に向けての一里塚だろう。
先行投資
注目したいのは、M&Aも含み、3年累計で700~800億円(前中計は450億円)の設備投資の中のモノづくり基盤強化、バーチャルOne Factoryであり、過去の事業に紐づいた縦割りの工場体制から、横串で、短納期は国内、コスト重視なら海外と、最適工場体制となる。全社で標準化を進め、バラバラ分散だったものを、集約化。子会社も半減。
R&Dも3年累計で400億円(前中計300億円)、イノベーション推進も含め、700人のR&D人員、センシング、ネットワーク、インテリジェンス(AI)、ロボティクス、ユーザーエクスペリエンスの5領域を注力。共創イノベーション推進では、Yume Proも期待したい。
IRデーを
過去、エレショーと言われた時代から、ほぼ欠かさず、CEATECには参加してきた。大昔は、晴海、今は幕張、1日かけて出かけ、コストパフォーマンスはどうだかとも思いながら、年中行事のように、帰路は疲れても、満足感と充実感があった。
それは、ハイテクお祭りであり、人々がごったがえす中、巨大な縁日屋台をブラブラするような楽しみがあり、多少はコンパニオンの様子も見て、説明員との会話も面白かった。そこでは、ブースに寄ることを告げて、久しぶりに旧知の方と話し、歩きながら、思いがけず、懐かしい方とお会いするのも密かな楽しみであった。昔は、講演などが目的であったこともあるし、自身が講演したこともあったが、それは、CEATECでもなく他でも聞け、多くの場合、似たようなテーマと講演者であり、むしろ、多くのロングテールのニッチ展示を見る方が面白い。そうした各ブースの工夫や盛り上がりが参考になる。
https://www.circle-cross.com/2019/10/20/ceatec2019%E8%A6%8B%E5%AD%A6/
今回は、コロナ禍ということもあり、オンラインの会場となった。開催期間中にアクセスしようとしたが、既に報じられているように、回線が混んで、なかなか入れず諦めた。リアルなら少し待とう、となるが、オンラインだし、後日でもいいか、ということになる。
そこで、先日入って、一部のブースは少しVR的だが、要は、巨大なHPの集合である。目的が明確なら、この方がいいが、そこには、道草もできないし、偶然の出会いもない。リアルなら身分を隠して、ライバルのブースをカラかう、とかもできたが、ここは全てが、オープンであり、透明であり、完全に見られチェックされているとなると、うかうかできない。いわば中国共産主義国家のようだ。いろんなブースに立ち寄って、そこから、紐づけられ、メールが来ても面倒だ。それは、まるで、縁日屋台、お祭り、とは真逆だろう。
この差は、ZOOM会議などと同様であり、要はWEB世界では、明確な目的がある会議(株主総会、総会、等)はいいが、フリーなワイガヤ会議、道草、偶然の出会い、猥雑な感じが出しにくい。
これまで、シンクタンク、アナリスト、ファンドマネージャー等の仕事を通じて、固有周期・時定数的なレスポンス、タイムラグの問題を除いては、国内でも海外でも、あるいは外資においても、それほど、相手とのコミュニケーションに、悩んだことはなかった。それが、このアカデミックの世界の住人となりつつある中で、コミュニケーションの難しさを感じている。
振り返ってみれば、アナリストやファンドマネージャーは、グローバルに業務が標準化されており、お互いが共通のフレームワークや理解の上で、コミュニケーションが成り立っていた。もちろん、いわゆる野村の文化、アナリストの職業人文化という中では価値観も同じベースがあり、やり易かった。
あるいは、仕事の関係で、電機や半導体業界では、業界の方や、関係する役所の方とも、十分にコミュニケーションが成り立った(相手は不満を持っていたかもしれないが)。
ところが、大学では、アカデミック一筋の教員、多様な実務系教員、さらに、広範なバックグラウンドの社会人学生がおり、共通のフレームワークも文化もない。特に、アカデミック系は本音を言わず、公家の社会のように何が真実か不明な世界でもある。さらに、日々の会話や議論の中で、同じ野村でも、アナリストやコンサル経験者でも、発想や価値観のフレームワークが異なるようだ。
そこで、いわゆる理系文系(実験系か否かもある)、実業(製造業、非製造の差もある)虚業の象限で考える。
SKハイニクスが、インテルのNANDフラッシュ事業を約90億㌦買収する。各国独禁法チェックを経て買収完了は2025年。インテルのシェアは10%弱、SKハイニクスも同程度で、二社を合計すると、キオクシアの20%弱に上回る可能性もある。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65253400R21C20A0X13000/
インテルはフラッシュメモリのパイオニアで、NOR型や3DクロスポイントやSCMも手掛けるが、今回はNANDだけであり、フローティングゲート方式(最先端はチャージトラップ)、3D化も64層程度(多くは100層以上)と遅れている。インテルはプロセッサでもAMDに苦戦、ファウンドリでも7nmプロセス遅れなど、TSMCやサムスンにも劣位であり、今後、垂直統合型からファブレス型へ移行する可能性もある。ここのところ、データセンター向けが好調であったが、需要ピークアウトであり、ポートフォリオ入替や業態構造変化を進めるのかもしれない。
韓国支配となるか
インテルNAND事業価値の半値は割安か、先行きを織り込んでいるか
社会人、その道ではプロを相手では、既に情報の非対称性はないが、20歳前後の学生相手の学部でも、オンライン授業が主流になり、YouTubeなどで世界の講義を視聴できるようになれば、徐々に、情報ギャップは無くなっていくだろう。特に、社会科学や人文科学では、閉ざされた空間で小難しい理論を、選択肢がなく決められた教授から難しく教えられている(資本論等も、要は訳が下手なだけではないか)とのは違って、世界の一流大学から楽しいく明快に教わると、「秘すれば花」の花伝書を思い出す。
そういう意識があるからかどうかは不明だが、学部の教授から、「ネット社会で情報ギャップが無くなるとコンサルタントはどうして付加価値をつけるのか、またコンサルの結果、間違ったらどうするのか」と聞かれた。MBA理論もどんどんコモディティ化してくると、高級人材派遣業化しつつあり、あるいは、案件に関し共同出資により結果責任を問われるケースが増えているようだ。
こういった現象は、アナリスト業界では、90年代後半には、フェア―ディスクロージャ、IRの登場で起きており、企業からの情報を独占できなくなり、有名社長セッティング、工場見学ツアー、セミナー屋など、投資家サービス業してしまった。もちろん、企業側の話を伝えているだけでは付加価値はゼロどころかノイズがのればマイナスだ。しかし、それなりに分析し、更に同業他社と比較、類似のケース、海外、業界動向等を提供すれば、企業側も参考になり、もちろん、投資家も参考になり、付加価値はある。企業内でも、全役員に取材し、全工場を見学する等、30回以上の1時間程度のINPUTがあれば、社長でも気が付かない情報価値もあるだろう。投資家からの見方を集約して、会社側との見方と比較分析もある。さらに、長期に亘ってフォローすれば、就任早々の役員よりは詳しい面も出てくるだろう。そういう多くの取材や分析から、独自の理論や切り口が見つかり、それで、明快に分析すれば、付加価値は大きいだろう。
つまり、ネット社会でも、常に新鮮な先端の情報を入手し、比較・組み合せ、独自の切り口で分析すれば、十分に差別化できる。往々にして、情報の価値は個別性があり、貿易と同様、ある相手からタダ同然で得られる情報が、ある相手には貴重であり、こうした情報の出し手と貰い手をマッチングすることでも、付加価値は出せる。
大学、MOT、ビジネススクールに身を置いて4年目となり、自分の立場が微妙になってきたが、大学と実社会との関係、溝の深さを痛感する。これは日本に顕著な現象のようだ。
理系も含めて、多くの学者、特に、経営学者、ビジネススクールの関係者、MBAのOBなど、その多くは、本音では、日本の経営者を馬鹿にしているようだ。曰く、勘と度胸、経験だけ、理論を知らない、国際的経営フレームワークを知らない、故に、MBAを出ても活躍の余地が少ない、ポスドクが増える、経営学部に修士や博士が来ない等などだ。
企業側は、経営学は机上の空論、現場を知らない、ビジネススクールを出ても役にたたない、だから、進学させない、等、という声が多い。
そこで、R&Dの4象限を参考に、特に経営学と企業経営の関係を考えると、下のようになろう。ビジネススクールは、パスツール象限と同じ位置にあると信じたいが、ボーア象限が増え、場合によっては、左下に行っているかもしれない。そこは、理念と宗教的哲学的な、現実も見ず知らず、検証もせず、というお花畑だ。
MOTの講義で、数名のゲストを招き、討論するものがある。そのグループ発表で、あるグループが、数名のゲストを、EQを提唱したダニエル・コールマンによるリーダーシップの6分類で評価した。
この発表自身は、これらが、①1人が1つに固定的に対応する静的なものではなく動的に動くものであるし(リーダーも成長過程で変わるだそう)、②それぞれのタイプが相関関係にあるか相反するか(実は、SDGsの17項目も、お互いに矛盾がないか、独立事象か、同様の議論は必要であろう)、など論点はあるものの、一つの切り口であり、面白かった。
この6種類のリーダーシップとは、1)ビジョン型、2)コーチ型、3)関係重視型、4)民主型、5)ペースセッター型、6)強制型であり、1995年に発表された。https://souken.shikigaku.jp/446/
これは、私が2016年に提唱した、日本ならでは、会社法が変わる中での社長の再定義、1)象徴型、2)調整型、3)資本家型、4)事業家型、5)戦略ミッション型、6)プレーイングマネジャー型と同様の概念だろう。
さて、違和感を覚えたのは、今は、非常時でないので、6)は必要ない、との発言だ。日本全体が、世界が非常時でないはずがないと考えている。VUCA、コロナ禍、米中摩擦、過大な政府借金、高齢化、などなど非常事態が加速化している。確かに、非常事態が常態化しているが、まさに国民が不感症になっている。
ムーアの「パラノイアだけが生き残る」の言葉を思い出す。GAFA、国内でも、私の知る多くの名経営者が心配症、パラノイアであり、それが時々、過度に出てしまうことが問題だろうが。ESGやティール組織も大事だろうが、どうも、リストラが無い、実社会と隔絶された、アカデミックの経営学者のお花畑の「経営理論」に影響されているのだろうか。
日経新聞23日朝刊で、日立が日立建機をJICに売却と報じている。元々、親子上場の問題があり、2009年からの流れで時間の問題だったろう。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65359160T21C20A0MM0000/
違和感があるのは、JICへの売却である。JICは、一時的なものであり、いずれ、国内企業での再編か海外との連携になるだろう。また、2009年時点では、コングロマリットディスカウントもあったろうが、10年たち、ルマーダの応用もあり、情勢は変わってきている。
MOTでの1年次での最重要コア科目「イノベーションを生む企業文化」(1単位 180分×4回)を受け持って、3年になる。タイトルは企業文化とあるが、英語名はイノベーションエコシステムである。
理論的な話だけでは、つまらないだろうから、30%は、イノベーションモデル、イノベーションとリスク、オープンイノベーション、アントレプレナー等、イノベーションに関する理論講義だが、20%はイノベーションの主体であるR&D部門のトップの方をゲスト招聘、あと50%をグループワークや発表など演習に充てている。
講義の狙い
1年ということもあり、お互いを知ってもらうため、最初のイントロで、1人ずつ数分で、①自分の好きなイノベーターあるいは自身のイノベーションの定義、②自身が起こした/起こそうとしている/起こしたいイノベーション、について発表してもらう。
その上で、数人毎のグループに分かれ、何かハイテクを選び、関連する二社を比較分析、自身がCTOになったつもりで、そのイノベーションをどうするか、グループで議論し発表してもらい、それを皆で議論する。
ハイテクのテーマ
もっと面白いのが、彼らが演習・発表で選ぶハイテクのテーマだ。これが毎年、世相というか技術の流れを反映している。
実際には、2018年はドローンや自動運転、2019年はVR、MaaS、アシストロボ、そして、2020年は人工食料やバイオ系が多かった。
富士通研究所の説明会が10月13日13時半~15時、Web開催。プレゼンは、富士通のR&D戦略について、富士通代表取締役副社長CTOで富士通研究所会長である古田氏、デジタルトラストを実現する最先端テクノロジーについて、富士通研究所社長の原氏、また、新規発表として、デジタルアニーラによる中分子創薬に関して岩井氏から、量子コンピューティングに関し佐藤氏からプレゼンだった。
R&D戦略では、調査分析機能強化に注目
古田CTOは、富士通では、7つ(コンピューティング、ハイブリッドIT、データ、IoT、5G、サイバーセキュリティ、AI)の重点テクノロジーに集中、それぞれ単独だけでなく、その組合せで新たな価値を想像、提供できると説明。これは特に最近の技術の本質を突いた見方だろう。
新しいテクノロジー詳細
原氏からのプレゼンは、7つの技術から、幾つかについて、説明があった。この中では、ディープツインがICML学会でも採択され、「次元の呪い」を解決する新AI理論として極めて注目できる。ハイデュラビリティラーニングは精度劣化をカバーできる実現的なものだろう。
日本学術会議についての議論が尽きない。しかし、日本学術会議は、日本のアカデミックを、本当に、バランスよく反映しているのだろうか。下記のグラフは、210名の分野別だが、エネルギー、化学プラント、自動車、航空宇宙船舶などが無い。また、人文社会科学に比べ、自然科学系が少なく、更に、理学は多いが工学、実学系が少ない。
そこで、調べられる範囲で、日本の学会と会員数からバランスを見た。日本の学会は非常に多岐にわたり、学術会議のどの分野かは不明である(生物物理や理科教育等、複数に跨る分野もある)が、検証を、下表(一部)のように試みた。学会は、文科省等のサイトから調べたが一部古い場合もある。
そこで、有意と考えられる分野で、倍率ランキングを示すと、下表である。電気電子は、倍率2.2万人に1人の狭き門、数理、土木建築、機械なども1.5万に1人。文系では、経済が1100人に1人、経営学は683人に1人、政治は190人に1人である。明らかに、工学系は不利であり、文系特に、政治系は有利である。まさに、科学技術軽視であろう。学問に貴賤、上下はないはずで、今こそ、改革が必要だろう。
ファナック元会長の稲葉清右衛門氏が10月2日に逝去された。大学時代、精密の大先輩で、工場見学その他で、何度か、お話を聞いた
その数日前、9月30日には、黒田精工の名誉会長の黒田彰一さんも逝かれた。稲葉さんとは、精密の同期で親友だったと聞く。金型業界の調査や、精密学会シンポジウムでも、大変、お世話になった。
相次いで、日本のものづくりの巨星が逝く。お二人とも、実社会はもちろん、学会などへの理解も高かった。稲葉さんは、精密や前身の造兵学科の歴史館などでも貢献をされている。
こころよりご冥福をお祈りいたします。
米中摩擦が更に加速化している。米のELに対抗して、中国も同様の禁輸リストと日経新聞10日の報道で伝えている。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64852880Z01C20A0MM8000/
日経報道によると、中国は戦略物資やハイテク技術の輸出管理を強化する法律をつくり、13日からの全人代が審議、2021年施行の模様。管理品目リスト、輸出禁止制限の企業リスト、があり、後者は再輸出を担う第三国の企業も対象、また、域外適用もあるようだ。
日経報道にはないが、フッ素の原料になる蛍石も中国依存度が高い。半導体、FPD、レンズなどハイテクに幅広く必須であり、欧米、日本も厳しくなる。
日本の電機・半導体の復権と米中摩擦対応に関連して米サプライチェーンにない6G基地局や半導体等を日本で供給するための一つの解は、かつての電電公社通研、あるいは、DARPA、独フラウンホーファー研のような存在、いわば6G以降の研究プラットフォーマとなる研究機関を再構築することではないか。
現在の日本のR&Dの問題は、5年以内の研究はいいとして、それ以上、10年あたりの研究は、見通しが悪い上、自社で基礎研究をする余裕は無くなりつつあり、オープンイノベーションや大学やベンチャーに任せている感もある。しかし、その幅広い中長期と、5-10年の間に大きなギャップがある。米DARPA、独フラウンホーファー研の存在がない。これがかつての日本では電電公社通研があったのである。
既に、日本の電機・半導体の敗因について、語られ尽くされたかと思っていたが、新たな仮説が二つ出てきた。
第一は、新たなという程ではなく、識者の中では語られぬ常識、自身も同感ではあるが、公開された先行研究では少ない。それは、電電公社民営化、NTT分割と、それに伴う、武蔵野通研など「通研」の再編の影響である。民営化および分割は、多くの先行研究や議論があるが、研究所の再編の総括は少ない。再編で混乱があり、影響があったという指摘もある。https://www.adcom-media.co.jp/remark/2012/02/25/5227/2/
当時、安原副総裁は、その視点から、分割民営化に反対であった。また、多くの関係者が、個々に電電解体、R&D解体の影響は指摘している。
今、凡そ30年を経て、NTTのドコモ完全子会社化やGAFA対抗、米中摩擦その他の議論もある中で、再度、総括も必要であろう。
第二は、日米摩擦での対応ミスというものであり、ユニークだ。すなわち、米と闘うのではなく、米のパートナーとして、対応すべきだったというものである。
マスコミ、投資家アナリスト向け富士通DX説明会がYouTubeで開催された。出席は、時田社長、福田CIO、モデレーターとして名商大ビジネススクール澤谷由香子氏である。冒頭、東証トラブルに関し、時田氏から謝罪があった、深く頭を下げた。その後はネクタイを外し、時田氏より、富士通がITからDXへ変化につき簡単に紹介、福田氏よりDXにつきプレゼン、澤谷氏のモデレートにより、カジュアルな雰囲気で座談会形式。その後、質疑だが、マスコミからが多く、DXに関する深堀よりも、東証トラブルや富士通の変化など。
DX、フジトラ
福田氏によれば、DXの中で、特に、トランスフォーメーションであるXは重要。富士通でのデジタルツインを築いていく。
多くの人は、人体データに縁があるのは、健康診断の時ぐらいだろうが、シニアになり、病気が増えてくると、体重、血圧、体温など測る数値の種類が増えてくる。コロナ禍では、血中酸素飽和濃度も重要と聞き、毎日測るようになった。血糖値も、数ヶ月おきに、2週間24時間測れるセンサをつけて、チェックしている。体重計は、数字間おきに、夜中にトイレに起きた時も測ると日中の変動が分かり、朝方減る場合が多く、血圧計も2種類で、両腕で、測ると変化があり、面白い。血糖値も、1時間毎に測ると、食後や夜中での差、食べ物の種類や、心理状態でも変化することが分かる。
通常は、円や数量、bitなどの単位や指数には慣れ、変動やレベルも把握しているが、この人体データは、種類によって、数値もサイクルも大きく異なることに改めて驚かされる。
スイスのビジネススクールIMDが、10月1日、2020年度の世界のデジタル競争力ランキングを発表した。知識、技術、将来への備えの3項目で評価、全63カ国・地域中、日本は27位、また、順位を落とした。データ分析や人材確保が弱いという。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64477330R01C20A0EA2000/
日本の順位27位(昨年は23位)に驚きはない。ITとかいうより、本質は、英語力と俊敏性、ガラパゴス性、等、だろう。ランキングでは、1位は米、2位はシンガポール、3位がデンマーク、4位はスウェーデン、5位香港、6位スイスで。2位から6位は、いずれも小国で、そんなもんかという印象だが、台湾が11位で、韓国9位より下は違和感、中国16位、また、エストニアが21位(昨年は29位で日本より下)は本当なら、話題先行の国だったか、ランキングがおかしいか。
米の1位は、一瞬そうかと思うが、大統領選で郵便投票が議論になっている話を聞いて、どうして、グリーンカード等を用い、ネットでやらないのか不思議だ。さらに、本来は、ネットを使えば、直接民主制も不可能ではない。片方で、デジタルを喧伝するのに、なぜ、話題にもならないのだろうか。
DXに関して、日経経済教室で一橋大学の一條教授が寄稿しているが、IMD2019年同ランキングでは、企業の俊敏さで最下位だったそうだ。https://www.nikkei.com/article/DGXKZO64419350Q0A930C2KE8000/
また、DXとSIの議論もあり、日本独自のSI企業の存在がDX普及に関連し、IT技術者が海外と異なり、ベンダーに多いことも課題だ。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64254700V20C20A9TJC000/
日本もデジタル庁ができるが、それが自己目的化し、本質は変わらず、過去の住基ネット等、組織ができ、何かのITシステムができておしまいになりかねない。ハンコ無くせ、FAX無くせ、ではなく、まず、役所の全ての仕事を、透明化、見える化、棚卸しすることを同時にやらないとダメだろう。そこには、当然、国会議員の在り方、なども関連してこよう。
菅首相が日本学術会議推薦の会員候補6人の任命を見送ったことに関して、議論が盛り上がっている。議論の多くは、政治のアカデミックへの介入で、けしからんという論調である。もし、アカデミックに限らず、本当に、言論の自由が制限されるなら由々しきことであり、実際に、安部政権時代に、複数のエコノミストの大学教授がプレッシャーを受けたことは耳にしている。
しかし、私は、マスコミの論調に違和感を持ち、学術会議なるものの存在と役割に疑問も持つ。アカデミックの頂点とされるが、どういうプロセスで会員が選ばれ、その中身に透明性があるのか、ということである。また、学問の自由というが、「軍事研究」には反対であるという。実際、2017年には防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」について懸念を表明する声明を出した。
軍事研究の定義
社会から遊離した社会科学系アカデミック
学術会議は社会ニーズを反映して税金を使っているのか
MOTで、今年から新しい科目として、「実践ケーススタディ」を始めた。
実践ケーススタディ~学生、OB共に学び合い
功成り名遂げた立派な経営者というより、MOTを卒業して、子会社の経営者や起業家などとして頑張っている若手を呼んで、プレゼン、質疑や議論を通して、互いに学び合うというものだ。身近なリーダーとしての奮闘や、修了してから振り返ったMOTの価値、後輩へのメッセージなど、他方、学生からも、アドバイスをしてもらう。
まさに、現在進行中の生きたケーススタディであり、マーケティング、リーダーシップ、ファイナンス、サプライチェーン、知財など多方面から分析し、発表する側も、いい復習にもなるだろう。成功例も悪戦苦闘例もあるが、色々な意味で、参考になる方を招聘しているつもりだ。教員サイドも、教育効果やカリキュラムの再チェックになり、必要な場合にはサポートやフォローもする。修了生は、いわば、社会に送り出した製品であり、アフターメンテナンスもしなくてはならない。
数字も見ずに株価に言及する、役所出身の教員と金融系の学生
先日も、未上場のオーナー系であり、ESG的にも素晴らしい会社の経営層を招いた。学生からも多くの議論が出て、盛り上がった。
厳しく指摘、見えざる資産と非財務情報の前に、見える資産、財務情報の分析を
今、アカデミックでは、見える資産や非財務情報が話題となり、EDGS等に関心が移っている。それは、それで結構なことだが、見えざる資産、非財務情報の前に、見える資産、財務情報の分析ではないか、と言いたい。また、アンケート、ビッグデータの前に、まず公開数字(財務、特許、等)のチェックである。
東証はシステムトラブルで、10月1日取引が終日ストップした。前代未聞だ。ヘッジファンドでファンドマネージャーをしていた時代にも、2005年11月のプログラムトラブル、2006年のライブドアショックでも半日停止はあったが、大変な迷惑だったが、今回は常識を超える。3.11の時でさえ、売買を停止せず、古いビルの7階と8階で大きく揺れ、棚が倒れ、コピー機が動き、命の危険を感じながら、運用を続け、それでも取引停止にしない東証に違和感を覚えたが、こんなことで停止にするとは、遺憾だ。DXの矢先に、金融インフラがこれでは、お笑いだ。世界の投資家の東証離れ、投資家の株式離れも進み、そうでなくても、米中摩擦もあり、ファンドのマーケティングにも影響するだろう。
原因は、メモリディスク装置の故障で、バックアップが上手くいかなかったと報道されているが、以前もそうだった。今回のシステムは、富士通製の「アローヘッド」で絶対停止しないことを謳っていたが、そもそも、その設計思想が「浮沈戦艦」「難攻不落の城」と同様で、疑問だ。