世界中で、国家と市場の関係、あるいは、官と民の役割が変わってきている。地球環境や安全保障に関わる課題や、巨額な資金が必要な課題は、一企業では難しい。GAFAなどの巨大企業は、資金的な能力はあるかも知れないが、利益優先の方向性や独占により、社会的課題解決どころか、マイナス面もある。
まさに半導体は、国家同士の知恵とカネの出し合いの競争になっている。先日は、JSRのJIC傘下の動きもあり、政府や役所が、産業政策、あるいは、金融政策において、どこから、カネが出てくるのかについて、触れてみたい。役人ではないため、誤解があるかもしれないが、御容赦願いたい。
最近、兆円クラスの資金も出ている経産省では、NEDO資金がある。これまでは、技術開発中心であり、数百億円程度であったが、工場建設など社会実装にも使えるようになったのが大きい。
6月30日昼に、リアル受講者593名を集め、東京ビッグサイトにて、COMNEXTセミナー特別講演「2030年に国内売上高15兆円(20年比約3倍)となる半導体産業について、国家戦略、インフラ構築、アプリケーションの観点で各ポジションの代表が議論する」とのテーマにて、90分のパネル討論のモデレーターを務めた。パネラーは、経産省金指さん、Rapidus小池社長、デンソー役員の加藤CTO、NTT塚野IOWNセンター長である。パネル討論に先立ち、自民党の半導体議連の甘利衆議院議員から、挨拶があった。まず、チャットGPTの話題とジョークから始まり、半導体を巡る国際情勢と国策について5分程度のスピーチ。通常なら、多くの政治家は、挨拶して「公務があるから」と退出するが、甘利先生は、そこが違うところで、30分以上、最前列で、パネラーのポジショントークと討論に耳を傾けられていた。
新MOT3.0では、新科目「組織と人事」を担当しているが、MOTの組織と人事の問題を抱えている、当事者が教えているのは皮肉だ。まず、学生が属する組織人事について、有名なコングルエンスモデルや両利きの経営のフレームワークを考慮して、良い点や悪い点をあげてもらった。教員3名も、属した組織について、整理する。若林自身で言えば、下記の表のようである。ヘッジファンドは小規模のベンチャー的組織であり、省略し、日米欧のアナリスト部隊を比較した形になっているが、個人と組織全体のベクトルが一致しており、人事もグローバル同様に流動性があり、評価もアナリストランキング等があり、ある程度、客観的だ。その意味では、日本の伝統的大企業に比べ運営は楽だった。
先週、JSRが、JIC傘下になることが決まったようだ。正直、ニュースを見て、驚いたが、何となく腑に落ちた。
半導体では、JSRはレジストでトップ、ドライ系のラムリサーチと異なり、ウェット系で、TELなど装置メーカーと、強いサプライチェーンを築いており、特に、EUVでは鍵であり、IMECにとっても重要である。2019年には、565億円を投じ、米国ベンチャーのInpria社(2007年設立以来、EUV用メタルレジストの開発に取り組み、スズ酸化物を主成分とした材料はEUV露光系で世界最高性能の限界解像度を達成)。半導体製造のエコシステム上、更に重要性を増した。
日本の企業も、大学も、PDCAが好きなようだが、PDCAのそれぞれに、時間であれ、人であれ、どの位の経営リソースを割いているかのアンケート調査や先行研究は見当たらない。
PDCAサイクルは、同一組織か、それぞれで分かれているか不明だが、通常、Pは企画や経営トップ、Dは現場、Cは、経営トップや社外役員や監査、Aはまた現場である。もちろん、状況次第であり、クラシカルな戦略とアダプティブな場合でも異なる。
モノづくりのアナロジーなら、Pは設計、Dは生産、Cは検査、Aは手直し、バグ取り、等であろうか。半導体産業なら、Pはファブレス、Dがファンドリ、Cがテストハウス、ロジックなら、Pが半分強を占め、Dがその次、Cは少ない。メモリなら、Pよりも、Dが大きく、CやAもやや多い。
これが、あまりに、CやAが多いようであれば、採算的には問題であろうし、Pに問題があるのだろう。一人で何かやる場合も、Dが重要であろう。
先日、民放テレビに出演して、半導体の微細化で、ナノの話となり、そこで、常連の有識者のコメンテーターが、ナノという微細な半導体チップを製造するなら、さぞ、小さいロボットが必要なのでは、と聞かれ、驚いた。工場見学で、クリーンルームに入り、巨大な露光機やエッチャ―など、実際のラインを見ていると、そういう発想には、ならないが、確かに、素人ならではの鋭い質問だ。こうした有識者ですら、そうなのだから、一般の方は、ナノの微細な加工には、ナノではないが、同等の大きさのロボットがいるというふうに、思われているのかもしれない。これを、正しく説明するのは難しい。
昔から、日本に多い、課長席を中心に、「島を」作って、並べる、開放オフィスは、コミュニケーションに良いとうが、実際は相互監視である。
新しいオフィスは、フリーアドレスで、開放的だが、どうしても、相互監視が残る。そこに、日本の「和を尊ぶ文化」があり、仕事が終わり、早く帰ろうとしても、気を遣って、机の上の整理をしたりして、ダラダラしているのではないか。
外資系は、狭くても、個室になったりしており、いるのか、いないのか不明であり、個人主義も徹底している面もあり、それゆえ、他の社員が何をしているか、関心がなくなる。それゆえ、さっさと帰る。もちろん、日々のコミュニケーションの問題はある。
そこで、贅沢だが、家が、自分の部屋や書斎、子供部屋と、リビングがあるように、オフィスも、個室と開放的な空間と二つ設けてはいかかだろうか。テレワークも進み、空いている部屋もあるだろう。集中したり、クライアントと商談は、個室で、気分転換に、開放共用スペースでも、作業すると、適度なコミュニケーションもでき、自分のペースで仕事を始め、仕事を終えられる。
モノからコトへの転換、が叫ばれているが、ハードからソフト、あるいは、パッケージからソリューション、だとか、色々な解釈があるが、曖昧だ。
実は、単位系で、考えると、モノからコトは、明らかだ。モノとは、要は、価値が、\/kg、あるいは、\/㎡など、単純な物理量で測れるものではないか。これに対し、bit等、新たな概念の単位や、カーボンニュートラル志向で、bit/Jなど、複数の単位系が組合されたりすると、そこに新たな価値観が創造され、コトへの転換が生じるのではないか。
半導体では、シリコンはkg単位で売られるが、ウェハーになると、品質やエピ等の再はあるが、8φ、12φ、と基本は、㎡単位である。これが、メモリになると、やはり、品種などの差はあるが、bit単位になる。カーボンニュートラルが重視されると、そうした単位をJで割ったりする。ディスプレイでは、最初はガラス板だが、それに膜が形成され、やはり、8Gや10Gと㎡や、画素数等が単位になる。画像センサーも画素数だが、ダイナミックレンジ等、用途に応じた価値観で値段が変わる。
ソフトでも、紙はkgや枚数だが、原稿料は字数だ。プログラムならコード数や人月であり、そこに、価値観の違いはない。そうであれは、ソフトでもモノだ。
これが、コトになるためには、新たな単位系が必要になる。
経営重心論でジャパンストライクゾーンの右上は、日本では、スケールできず、スピードが追いつかない領域、左下は、日本的な摺合せでは難しい領域だ。右上は、オーナー系部品メーカーのように、トップダウンで臨機応変にやるしかない。左下は、天才的なアーキテクチャによるトップダウンか、第二モジュラー(簡単なモジュラーではなく、原発や宇宙衛星基地など長期に亘り使用せねばならず、かつ、複雑すぎるシステムを、デジタルツインにより、シミュレーションしながら、設計製造保守する)しかないだろう。露光機も、かつては、日本的な摺合せで対応できたが、EUVLになると、この第二モジュラーしかない。ジャパンストライクゾーンは、スケールが難しく、モジュール設計もせず、摺合せ、時間をかけ、勘と経験で対応する領域ともいえ、それが日本の産業の成長が難しい本質でもある。
ビジネスであれば、結果は明らかであり、反省して、改善や修正し、そこに進歩がある。それゆえに、最低限の規律というか、それがモラルになっている。ウソや屁理屈を言えば、相手にされないし、信用がビジネスの基本である。
ゼミで、直観シリーズで著名な物理数学者の長沼伸一郎先生を招いて、「世界の経済・経営・科学技術と人類を直観で理解する~AIが無限大に発達した場合、人類は勝てるかの数学的証明の試み」と題し、最初二人でパネル討論、その後、50名のリアル参加者の質疑、約3時間の知的刺激に溢れる空間だった。
長沼先生とのパネル討論では、「経済数学の直観的方法」の序文での文明論、理系文系、経済学アプローチ論、「物理数学の直観的方法」の「やや長めの後記」での三体問題、n乗行列での西欧と中東文明の差異、「現代経済学の直観的方法」での、貨幣論、貿易論、投資家/企業家/労働者の関係、経済学の歴史、等に、少し触れた。これからの新しい資本主義を考える場合、3層の対立関係が鍵だが、これも3体問題と関係があるように思えた。
ここ数日、日経平均が史上最高値を更新していることが話題になっているが、グローバル視点からは、ドル建て日経平均が重要であり、それは既に2021年1月に、275ドル(105円/$)と最高値を更新している。バブル時点では、89年12月28日には当時の最高値となる274ドル(142円/$)だった。日経平均は上昇だが、円安が進んだ分、ドル建て日経平均では下落している。その後。2023年に入り、230ドルあたりまで回復している。その意味では、海外投資から見れば、割安だと感じている。半導体等政策や輸出立国の回復等も期待があると思いたい。
日経平均は、あくまで大型株中心の指数であり。より実態を表わしているのは、日証の時価総額であり、こちらは新興勢力も入っている。バブル期の600兆円を超え、800兆円に迫っているが、世界は60兆$を超えている。GAFAは1社で100兆円級、国内ではトヨタ等が10兆円クラブである。
WSTS は 2023年6月6日、2023年春季世界半導体市場予測を発表、CY2023は前年比、10.3%減の515095億ドル、2022年11月秋季予測の4.1%減から、下方修正、2019年以来4 年ぶりマイナス。ICでは、13%減。CY2024は、全体で11.8%増、ICで13.9%増。過去のシリコンサイクルの比較では、ITバブル崩壊よりは、マシであり、リーマンショック程度、コロナショックよりは悪い。
なお、OMDIAは2023年5月22日に、7.5%減と予測、証券アナリストは概ね二桁減、自身も、半デジ会議でも以前から二桁減と主張しており、それほどサプライズは無いであろう。なお為替は、2022年は131.4 円/$、2023 年以降は132.4円/$前提
興味深いのが、日本市場で2022年は+31.7%、金額で約6.3兆円から、2023年は自動車が下支え、+1.9%とプラス成長、約6.4兆円、2024 年は+7.8%、約6.95兆円、ほぼ7兆円である。この統計ベースでは、日本市場は、2021年に7%だったが、2022年に8%台、2023年から9%台に回復している。
の5月末に、Chartered Group 2023 Deep-Tech Tokyo Eventが、東京ミッドタウン八重洲セントラルタワー 37階で開催され、午後の企業別のプレゼンやブースに訪問した。久しぶりに、イスラエルのイノベーションの熱気に触れた。
注目したのは、超遠距離(イスラエルと日本)から操縦できるドローンのXTEND社、使い捨て型内視鏡のZsquare社、フォトニックコンピューターを開発しているCognifiber社、ベテランの暗黙知をAI化するInnerEye社などである。XTENDは、実際にデジタルツインで、リアルと比較して操縦デモは圧巻。また、ビジネスモデルも、ドローンそのものではなく、そのOSを売ることにあることも、感心した。XTENDは、ファイバーが使い捨てで、画像センサやライトは本体にあり、波長なども可変、様々な部位に対応できる。既に、実績もあるようだ。光コンピュータは、やはり、通常のコンピュータとの接続が鍵であろう。InnerEyeは、マクニカと提携、脳波計などで展開している。
チャットGPTなどの生成AIの脅威や、インパクトに関する議論が多いが、その弱点も次第に明らかになってきた。当然ながら、過去の文書やデータから機械学習するわけだから、あまり、データが集まっていない、直近の話題や、個別性の高い話題は、精度が落ちる。例えば、マーケティングで、最近の売れ行きについて、聞いても、直近の数か月の動向や、あまりにマイナーな分野は、役に立たないだろう。他方、企業が欲しいのは、まさに、自社が関わる狭い範囲の直近の動きだろう。
両利きの経営でのポイントは、下記の4点である。増補版もよんだが、同様である。
1.トップのコミットメントとリーダーシップ・・・しかし、いずれは、トップの任期もある。
2.組織構造運営を分ける・・・当たり前だが、より詳細は特別解であり、触れていない
3.共通のアイデンティティ・・・言うは易く行うは難しいだろう。
4.リソースの活用・・・ここが、大企業故に有利だとされており、ユニークな点だろうが、問題がある。すなわち、合うものと合わないもの、カニバリがあるもの汎用性があるものないものはある。特に、スケールする段階では問題になる。ここの考察が欠けているのではないか。
多くの会社が新規事業で悩む。新規事業を考えるフレームワークはアンゾフマトリックスである。これは、二行二列の行列である。
問題となるのは、これが、新たな新規事業を行う場合になる。既存事業と「新」既存事業と「新たな」新規事業あるいは、既存事業と二つの新規事業3つになるとややこしいろう。オーガニックな新規事業だろうが、M&Aによる新規事業だろうが、ポートフォリオ問題製品や技術や顧客だけでなく、ビジネスモデルや文化も密接に関係した事業ドメインになる。
いずれにせよ、ポートフォリオ問題になるが、三体問題ゆえに難しい(組織構造、シナジー、etc)
チャットGPTなど生成AIが注目を浴びているが、我々の生産性をあげてくれるのだろうか。これに関連して、日経新聞に、東大渡辺安虎教授の興味深い論考を寄稿している。
海外の最近の論文では、ソフトウエア企業のカスタマーサポート部門に対し、ChatGPT導入効果を検証。生産性が平均14%上昇。その効果の大半は低スキルの人の生産性上昇によるもので、高スキルの人には効果はなかったそうだ。また、専門的な記事を書くライターにChatGPTを提供、影響を推定するフィールド実験で、生産性の低い人ほど改善効果が大きかった。渡辺安虎氏の、タクシードライバーの生産性に関する論文でも、AIの生産性上昇効果は低スキルの人に集中。つまり、共通するのは、低スキルの人ほど生産性が大きく上昇する点だ。これはAIが、スキルそのものの価値を低下させかねないことを意味する。これまでのインターネットやITは、高スキルの人の生産性をより高めたが、AIが仕事にもたらす影響は、逆である。ChatGPTが「底上げ」する生産性 渡辺安虎・東京大学教授 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
そもそも、IT活用によって、生産性があがるかというと、日本のIT業界ではそうではない。人月制であり、生産性をあげると反って、時間が減り、給料が減るからだ。
パワー半導体は、ロジックやメモリと、技術やトランジスタの構造も異なるが、業界構造や国際競争力も大きく異なる。デジタルでは水平分業であり、ファブレス/ファンドリモデルであり、デバイス階層での横連携統合が多かった。
しかし、パワー半導体は装置や材料も異なり、応用分野との関連が強く、縦連携も重要だ。
広島サミットもあるが、世界が、半導体や国家安全保障などで、大きく動いた5月であった。驚くべきことは、世界の半導体トップ企業、IMECやIBM等も含めて、来日したことであり、かつてない動きである。日本も欧米も大きく変化している。
既に、日本人の多くが罹患している、コロナ(オミクロン)に感染した。5月19日、授業から帰宅したのが、22時過ぎ、マッサージを予約していたが、咳も酷く、キャンセル、風呂もシャワーだけで早くすませたが、23時頃に発熱37度台後半、検査スティックで、深夜1時に、よもやの陽性が判明。先週から、延岡から戻り、12日は日経モーニングプラス生出演のため、5時起きで6時半にスタジオ入り、授業の後も22-24時で会食相談、13日もゼミ、公明党国会議員プレゼン、北海道新聞の取材など、声が枯れていた。数日前から、咳と痰はあったので、チェックはしていたが、陰性であった。
流石に、ショックだった。心臓の持病があり、高リスク対象ゆえに、日頃から人一倍に注意し、ウガイや、紫外線照射殺菌、手洗いを徹底、ただ、最近は、マスクを外すこともあり、油断していた。
経産省から、半導体デジタル戦略について、公明党の国会議員の先生方に、プレゼン要請の依頼があり、半導体デジタル産業検討会議有識メンバーとしての責務、最後で最大の機会を生かすため、引き受けた。国会議員では、自民党の甘利明先生には何度もお世話になっており、他の与野党でも知り合いはいるが、公明党は初めてだ。国会議員11名と公明新聞の記者、経産省の方が参加、約1時間の会議で、私の他、日経の太田さんとで。20分ずつのプレゼン、5問程の質問も含め、20分の質疑意見交換があった。
同じ与党であるが、自民党の場合は、国家安全保障的なウェイトが大きいが、公明党の場合は、より、地域活性化のような視点が重要だろうということで、デジタル列島進化論をベースに、昨年秋以降の地方対応、佐賀県、三重県、東京都、山口県、延岡市に対して行ったプレゼン内容も入れ込み、新たな工場の立地、街づくり、さらに、データセンタ等の話も織り込んだ。その中で、地方で強かに生きる地場産業や中小企業の話題を、中国や韓国との対比の中で行った。
日経新聞報道によると、Rapidusのラピダスの小池社長は、インタビューに応じ、AIや自動化により、技術者半数の500人で対応、2025年にEUVを入れ、2nmプロセスで、2027年に量産開始、2030年代半ばには、売上1兆円を見込むようだ。経産省の半導体デジタル会議で公表された見通しでは2030年の国内全体は15兆円である。ラピダス、技師半数で先端半導体 30年代に売上高1兆円 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
売りの規模感は、違和感はなく、2030年に国内半導体売上15兆円や、同業他社との規模感からのトップダウン、想定される需要やウェハー単価と量産数量などのボトムアップからも、妥当だろう。
オライリーの「両利きの経営」が大変人気のようだ。売れっ子の早稲田の入山教授などが勧めており、コンサルタントも利用しているようだ。この「理論」によると、クリステンセン「イノベーションのジレンマ」では、分けないと難しかった新規事業(探索事業)と既存事業(深耕事業)が、同時にできるそうであり、旭硝子や富士フイルムが成功例として取り上げられている。
何か腑に落ちず、熟読する気もないが、広島修道大の中園宏幸准教授が、同志社大学学術リポジトリに「両利きの曖昧さ : イノベーターのジレンマを解くほど器用か」で論考しており参考になる。 もともと、原著の「Ambidextrous Organizations」の「ambidexterity」は、二刀流などの意だが、両利きが定着した。中園氏によると、両利きが想定しているイノベーションと、ジレンマの想定しているイノベーションが異なり上、問題設定が曖昧なままに、その適用範囲を広げたという。同志社大学学術リポジトリ (nii.ac.jp)
経産省の半導体産業の戦略は、ステップ1であるIoT用半導体確保のためのTSMC熊本誘致とJASM設立、ステップ2は、最先端ロジック半導体の国内生産確保のためのRapidusとLSTC設立、IMECやIBM連携など、海外も驚くほどスピード感を持って実装が進んでいる。ステップ3は、IOWN等の光電融合を進め、ゲームチェンジである。新たに公表された半導体戦略2.0では、分野別に再編、先端ロジック、先端メモリ、スペシャリティ(アナログパワー)、先端パッケージ、製造装置、素材と、ロードマップが策定されている。分野別では、先端ロジックは、焼け野原からの立上げであり、日本の競争力は2週遅れだが、それ以外は、競争力を維持しており、センサやアナログパワー、製造装置、素材では、トップの例もあり、先端パッケージは世界でリードしている
中国の兵法で有名な三十六計は。戦略を自軍の優位性に応じて、分けている。
去る4月28日に、TDKの決算説明会がオンラインで開催、プレゼンはCFOの山西氏と社長の斎藤氏である。多くの電子部品メーカーが減益の中で、2022年度も2023年度も増益維持は興味深い。質疑は、MLCC市況や電池の動向。
2022年度は、売上2.18兆円、OP1688億円、セグメント別には、受動部品が増収増益、その内訳も、MLCC等のセラコン、アルミフィルムコン、インダクティブで、増収増益、高周波は減少減益、圧電等はクルマや産機が増収減益。センサ応用は、増収黒字化、温度圧力は増収減益、磁気は増収増益、MEMSはゲームやウェアラブル、クルマが好調。磁気応用は減収、赤字。エナジーデバイスは、増収増益、二次電池は好調、電源はEV向けでリストラ費用あり。
2023年度は、売上2.02兆円と微減収、OP1900億円と増益続く。受動部品は、9~12%増、センサ応用は7~10%増、磁気応用は2~5%増、エナジー応用は、厳しく、中型二次電池のCATLとのJV移管もあり、22~19%減。なお、中型二次電池は、厦門に生産拠点、2030年に売上5000億円を目指すようだ。
去る5月12日に、東芝の決算説明会がマスコミ投資家アナリスト合同でオンライン開催、プレゼンは平田CFOが中心に、次期CFOの松永氏が対応した。マスコミからは、非上場化に関して、CFOからは、答えようがない無意味な質問が多い。ただ、今回、平田CFOは退任であり、アナリスト、マスコミからも、労いのコメントが多かった。
思えば、2015年に東芝テックからCFOに就任以来、その間、社長は、田中→室町→綱川→車谷→綱川(畠澤)→島田と6名は最多、主要事業の売却は、メディカル、メモリ、PC、WH、家電、など、過去最大、不正会計問題や、GC注記もあり、記録的な御苦労であろう。同時に、IR活動では、開示も大きく進んだ。
色々、残念なことはあるが、そうした中で、真摯に、株主や市場関係者と対峙されてこその、マスコミからすらの労いだっただろう。
ロームの決算説明会が5月10日9時からオンライン開催、松本社長、東専務、伊野CFOなど。質疑は、市況や業績もさることながら、パワー半導体に関することが多い。
2022年度通期業種は売上5200→5078億円、OP900→923億円、NP800→803億円、EBITDA1485→1484億円と利益が上方修正。
半導体市況全体は厳しかったが、パワーは好調であり、車、産機は予想通りで堅調だった。セグメントでは、LSIが売上2337億円、OP481億円(20%強)、ディスクリート売上2122億円、OP345億円(16%)、モジュール売上343億円、OP42億円(12%強)、その他の売上276億円、OP50億円(18%)、であり、LSIがディスクリートをOP率で上回ったのは久しく見ない。
2023年度は、売上5400億円、OP750億円、NP700億円、EBITDA1590億円と増収減益ながら、EBITDAは増益、CAPEX1600億円と前年の1261億円から増加で、Dep276億円など固定費増426億円がある。年間の月次売上トレンドは4月、5月は前年比低いが、6月以降前年並み、9月からは大きく伸びる模様。在庫は、トランジスタやダイオードは1ヶ月分減らすが、パワーやアナログは在庫増が必要、ただ、在庫回転月数は4Qがピークの4.8ヶ月から減少へ。
足元の受注は、クルマは堅調、産機は2022年度下期調整から、FAや再生エネ等が既に改善へ、
中計は、2025年度の売上6000億円以上、OP20%、ROE9%以上は不変。パワーとアナログで車載向けを大きく増やす。
去る5月11日に決算及び新中計の説明会に参加した。新中計の「芝浦ビジョン2033」ビジョン期間内で、売上1000億円、OP200億円が示された。今村社長によるプレゼン、質疑は、中計より、市況や製品詳細についてが多く、少し残念だった。PCトラブルでテレコン参加のため質問できなかった。
業績は上振れ、中計も達成
2022年度業績は、受注768億円と半導体前工程中心に好調、売上610億円、OP109億円、NP92億円、と上振れ。利益ベースではOP、NPともに過去最高(2004年度OP88億円、NP51億円)を大きく更新は素晴らしい。人件費アップ、R&D費アップの中で、OP率18%、GP40%、ROE32%は、グローバルのSPE企業でも立派。中計目標の売上510億円、OP51億円、ROE13%を上回る。
半導体は前工程がロジックファウンドリ、パワー、ウェハー向けが好調な上、顧客評価が完了した貸出評価機の売上計上もあった。後工程も全体は減少だが、先端パッケージ向けは堅調。FPDは、前工程は低調だが、後工程がTVやモニタ向けが堅調。真空系も好調。
2023年度は、通期は売上590億円、OP73億円、NP52億円と減収減益ではあるが、成長投資費用増30億円の中で、昨年の2022年度の期初予想や中計目標レベルを上回っており立派。質でも、OP率12%強、ROE15%も十分。半導体は一時的な投資計画修正があり、FPD投資低迷が長期化。
グローバルニッチトップ実績、IMEC参加、他社連携増える
シャープは、5月11日、JDI(ジャパンディスプレイ)は、5月12日に、それぞれ、2022年度の決算を発表した。
シャープは、2015年度以降6年ぶりOP以下赤字、OP257億円(ディスプレイ部門のみ664億円の赤字)、NP2608億円赤字(SDP減損1884億円)だ。堺工場がベースのSDPはテリーゴーの投資会社となったが、2022年6月にディスプレイ市況が最悪で工場が低稼働率のタイミングで、シャープが買い戻すことになったことが問題視されている。
JDIは上場後、OPこそ、2014年度と2015年度は若干の黒字だったが、NPは、万年赤字、2016年度以降はOPも赤字である。トップも数年毎に代り、2020年から、いちごトラストの傘下となり、現在のキャロン氏がトップとなった。当初は1兆円を目指していたが、売上は1/4水準であり、リストラ、減損続く。関連会社だったJOLEDも破綻した。eLeap等の新市場は期待したいが、これからだ。
2014-2015年頃は、経営不振のシャープを巡って、鴻海とINCJが経営権を争い、INCJは、シャープのディスプレイ部門をJDIに統合させ、そこに、産業再編資金を投入しようと画策しているようだったが、鴻海が経営権を勝ち取った。鴻海は、噂されていた工場や人員のリストラはせず、生産や調達のスケールメリットを生かし、2016年度には黒字化、OP1000億円規模が可能になった。テリーゴーは、シャープのIGZO等の液晶技術、さらにはOLED技術の可能性に期待し、アップルへのサプライチェーン入りを目論んでいたが、台湾のAUO等に比べ、液晶技術は高いものではなく、液晶からOLEDへの移行が想定より早かった。これは、JDIも、同様であり、液晶技術の優位性を発揮することなく、OLED化も遅れた。
そもそも、半導体と異なり、ディスプレイは価格弾力性効果が小さく、スマホでも、PCでも、何枚も使うわけではなく、面積拡大も限りがあり、キャプティブでなければ、難しい。
決算および戦略見通し説明会が5月12日にオンラインで開催され参加した。大塚社長以下、トップが登場、説明は棚橋専務、質疑はEDA戦略に関して、小生のみ。決算集中日もあり。
業績は好調だが慎重か
業績22年度は、売上386億円、GP率32%、OP23億円、NPは17億円、増収減益。下期からの半導体市況悪化あり、テスターがNAND向け厳しく、STArもプローブカード減速で赤字転落、R&D負担も。他方、EDAやITアクセス、ガイオ等が好調。はあるが、NPは過去最高。FCFも強い。テスターはじめ半導体関連が強い。EDAでは、米中摩擦の影響は無いようだ。
23年度計画は、売上430億円、GP率31%、OP30億円、NP20億円、テスターはメモリ回復に加え、新分野、STArも改善。EDA安定、モーデック黒字化。
拙著「デジタル列島進化論」では、東京や大阪に並ぶ地方の大型拠点だけでなく、地方のエッジ型分散データセンタが50程度(都道府県に1-2カ所)の必要性を訴えている。地震などのリスクヘッジだけでなく、遅延問題があるスマート工場/農業、遠隔医療や自動運転のアプリケーション、過疎化対策、再生可能エネルギーの有効利用などが理由だ。これにより、情報とエネルギーと人材の地産地消を目指すべきだ。
そこで問題になるのが、採算性であり、ビジネスモデルである。
Finland大使館の招待があり、身の程知らずにも、パーティーに行った。まさに紳士淑女の中で、自分は大変場違いだった。
私のような立場の人間は少なく、半導体の話も聞いた事はあるがという程度であり、知己の関係者の他は、話題が難しかった。
国立社会保障人口問題研究所が4月26日、2070年までの日本の将来推計人口を公表、30%減となることが話題を呼んでいる。2070年に3割減の8700万人 将来推計人口、まとめ読み - 日本経済新聞 (nikkei.com)
5歳刻みで、年齢分布の予測の公表もあるので、平均年齢を計算する(平均値をとる、0~4歳なら2歳)と、2070年は53.5歳、2020年が47.1歳だから6歳もシニアになる。なお、2035年に50歳を超える。
47歳から53歳になると、労働生産性は25%程度下落するようだ(下図 製造業は半減)。
MOTは、技術経営であるが、経営理論とは何だろうか。経営学と経営理論、フレームワーク、実際の経営との関係はどうなのだろうか。
早稲田MBA入山氏によれば、「両者は時に『似たようなもの』として扱われることもあるが、実際は根本的に異なる」のだそうだ。氏は「大きな違いは、『why(なぜそうなるの』という、人間や組織の思考・行動の原理を根本から問うような視座の有無であり、「フレームワークは事象や物事を整理・分類はするが、その背景にあるwhyに答えてくれることは決してない」という。
これらのように、経済学、社会学、心理学の重要性は、認識しており、同意はする。しかしながら、違和感は、第一に、Whyに答えるのが理論か、第二に、経営理論は経済学、社会学、心理学だけか?
三菱電機の決算説明会が4月28日にオンラインで開催、漆間CEOのプレゼン後、各ビジネスエリア(BA)トップが説明。BAは、インフラ(社会システム、電力・産業システム、防衛・宇宙システムの各事業本部)、インダストリー・モビリティ(FAシステム、自動車機器の各事業本部)、ライフ(ビルシステム、リビング・デジタルメディア)、ビジネスプラットフォーム(インフォメーションシステム)、そして半導体・デバイスである。かつてとセグメント区分は変更されたが、事業本部ベースでは、従来同様である。開示は2021年度以降に改善され、事業本部別の損益が資料に開示されるようになっている(かつては口頭ベースでラフな%開示で誤差が生じていた。不祥事の副産物か。
事業本部別の損益は、かつてと大きく異なっている。稼ぎ頭であった自動車機器は赤字転落が続き、10%前後のOP率だったビルは5%前後となった。逆に、インフォメーションシステムが安定好採算だ。
業績は、2022年度は、売上5兆円、OP2623億円、NP2139億円、と増収増益。値上げ等も浸透、サプライチェーン混乱も一巡。
2023年度も売上5.2兆円、OP3300億円、NP2600億円と増収増益と品質不正問題にケリ、6年ぶりの最高益更新。為替125円/$、135円/€。
村田製作所の決算説明会が4月28日15時半開催。中島社長より業績説明のあと、質疑、対応は他に、南出氏、MLCCの大森氏など。既に2月に通期の業績を下方修正、その線での着地だったが、2023年度も減収減益が続き、スマホ等が不振。
2022年度業績は期初から2月2日の下方修正を経て着地は、売上1.82→1.68→1.69兆円、OP3800→2950→2979億円、NP2970→2260→2537億円。為替は135円/$。
2023年度は、売上1.64兆円、OP2200億円、NP1640億円、ただ、R&D1300億円、Capex2200億円、は増加、Dep1700億円も増、為替は127円/$と慎重。1円でOP50億円ゆえ、135円なら、OP2600億円と減益幅は減る。MLCCのBBレシオは回復傾向だが1割れ、稼働率も80%程度と厳しい。
ソニーの決算説明会が4月28日で開催された。今回は、これまでプレゼンを行ってきた吉田CEOでなく、4月に代表取締役となった十時COO/CFOがプレゼン。エレクトロニクス業界が不況入りの中で、プラットフォーマモデルが奏功、音楽映画が下支え、増収増益だった。今期も慎重ながら、売上10兆円、OP1兆円台を堅持。新たなKPIであるOIBDAに注目。EBITDAからOP外収支を除いたものであり、セグメント目標には適切だろう。
業績は2022年度、売上11.5兆円、OP1.2兆円、EBITDA1.7兆円、OIBDA1.7兆円であった。為替は135円/$と141円/€。
2023年度は、売上11.5兆円、OP1.17兆円は微減、EBITDA1.77兆円、OIBDA1.75兆円、為替は130円/$、138円/€。
今日、三権分立は、民主主義国家の常識であろう。そして、それは、国民のためだと思っていたが、もしかしたら、為政者側の知恵かもしれないと考えるようになった。クーデターや革命は、権力や富が集中する場合に起き、為政者だけでなく、多くの層が殺され、財産を奪われるが、政治や経済は混乱し、最終的には、国民もマイナス影響を受ける場合が多い。それゆえ、クーデターは国家反逆罪として重い。
日本は、天皇はかつて奈良時代頃までは象徴だけでなく、権力(もちろん武力)も財力も持っていたが、それゆえ、戦乱が絶えず、命を奪われることも多かった。それが、本郷和人が指摘しているように、宗教司祭的や文化面での知見で象徴として君臨することで、長く皇家を継続できた。明治維新以降は多少、権力もあったが、どちらかというと、拒否権が中心であり、戦後は再び象徴としての役割に戻った。
日本のマネジメント構造は、飛鳥奈良時代や、源平合戦、南北朝の騒乱、戦国時代等を経て、歴史的な教訓から、権力、財力、そして、象徴(君臨)あるいは知名度という有名力という三つのパワーのバランスあるいは分散が基本だろう。天皇あるいは学者等の有名力、官僚の権力、産業界の財力、三つのバランスが取れていて、国民も納得する。政策立案も、有名学者が有識者であり、産業界の有力者、官僚というパターンである。しかも、夫々の役割は固定している。
米では、比較的、大統領に全てが集中しているが、大統領自身がスター的であり、スターが大統領になることもある。更に、実業家が大統領にもなる。夫々が流動している。
拙著「デジタル列島進化論」を出した昨年から、今日の情勢は、1972年の田中角栄の日本列島改造論、二つのニクソンショック、東西対立、輸出立国、インフレ等、50年前に似ていることを指摘してきた。
そこで一つ、加えるべきは、労働争議や学生運動である。大学も企業も、コロナ禍でのリアルなコミュニケーション不足、少子高齢化の中でジョブ型も含めた働き方改革、そして、利上げ不況、チャットGPTなどAIによる影響など、労働者や就職を巡っては、混沌としてきている。大学も、高校生現象の中で、統合もある。
ニデックの決算説明会が4月25日に久しぶりにリアルでも(オンラインもあり)開催された。残念ながら、リアル参加申し込みした段階では、既に満員で締め切られた後だった。
会場の熱気はオンラインでも感じられたが、中央に永守CEO、左右に小部COOとCFO、両脇には、早舩氏とIR永安氏という雛壇。質疑からは、かつての永守節だったが、最初のプレゼンでは、ネクタイも変わり、メモを見ながら、これまでより話が長かった印象。質疑は、新体制、車載、特にモジュールやインバータやパワー半導体に関するもの、新事業部門の機械本部についてのものが多かった。
去る3月14日に、三井ハイテックがリアルで2023年1月期の決算説明会を開催、はじめて参加した。三井ハイテックは、半導体では、後工程パッケージに使うリードフレームで業界3位。数年で、急成長、2019年1月期は、売上820億円、OP5億円から、直近は売上1746億円、OP226億円だ。
モノであれ、コトであれ、商品であれ、サービスであれ、もし、ユーザーの要求を正確に定義できれば、それが全てといえるだろうか。それは、あくまで最低のスペックであり、狩野モデルの「当たり前品質」に相当する。しかし、シェアや売行きに影響を及ぼすのは、「一元的品質」「魅力的品質」「無関心品質」「逆品質」等である。その品質はISO等のテストで確認され、ある意味、テストが品質を決める。
これは、まさに入試や単位認定と同じだ。大学は卒業生に学士の資格を与えるが、それは、単位数や卒論等の成績で決まる。そのプロセスは、どうであれ、テストで一定の点数をとり、合格すればいい。しかし、その過程で、深く学ぶ場合も、一夜漬けで山があたった場合でも、変らない。本来、そのプロセスも含めてみることで、学生の実力や潜在能力がわかるが、あくまで、結果である。
かつて、今ならAIだろうが、ソフトウェアの研究で、構想は素晴らしく見えたが、そのプログラムは動かず、卒論が遅れた友人がいた。理系では、ソフトもプログラムも、機械等を動かしてナンボの世界である。企業なら、技術が動き、実装してこそ価値がある。
大学は、膨大な規定や規約等の文章があり、それで組織を「規定」しているが、それが本当に規定しているかどうかは不明である。最初にできたのが、昭和の大昔であったりするが、抜本的な改正には、多くの教授の賛同が必要であり、継ぎ接ぎ的なその場しのぎが多い。中には戦前のような難解な漢字があり、定義や意味が不明なものも多い。
そもそも、そうした文書で、組織を決めても、その通り、動くかどうかは難しい。日本語故に、曖昧な表現も多く、矛盾もあるかもしれない。さらに、組織の品質も定めておらず、文書により規定された組織が、きちんと動いたかどうかの評価もできない。難解な文書を作って、それで自己満足し、組織も創った気になっているだけである。特に、実際の組織では、多様な環境変化があり、そのシミュレーションすらできない。
MOTでは、産業界との対話を通じて、社会ニーズに対応すべく、毎年、新科目を導入してきた。この4月からスタートする新MOT3.0のカリキュラムでも、幾つかの新科目を試みる。
一つは、人事系であり、CXO的知見を体得する教育領域での目玉である。これまでから、企業派遣元の経営者からも要請があったが、構想3年、試行錯誤を経て、挑戦する。人事は、ジョブ型、働き方改革など話題は多いが、日本のビジネススクールでも意外と少ない。アカデミアは現場から乖離し、現場では各社毎で異なる上、秘匿性も高く、日米欧の文化も歴史的背景も異なる。
それゆえ、選択科目の「イノベーションを創る人事戦略」では、一人の非常勤講師等によるのではなく、日米欧の企業で経験がある若林がファシリテーターとなる。まさに、あれこれも満載だが、まず挑戦して、今後改善していきたい。
もう一つは、R&Dマネジメントやイノベーションマネジメントだが、CXO的知見というよりも、グラデュエーションペーパーを書く際に共通のテーマについて、授業で共有する。ある意味、教科書すら無く、最新の論文や事例を共に研究するというものだ。
機械学習の類型について、東大杉山教授は、①回帰、②異常検知、③クラス分け、④確率分布推定、⑤クラスタリング、⑥因果推論、の6パターンに分けているが、日経経済教室3月30日に掲載された図が分かり易い。原理解明 さらなる研究必要 AI開発の現在地 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
科学技術強化政策の中で、10兆円ファンドが注目を浴びている。東大、京大はじめ、私学では、早大、わが理科大も含め10校が支援対象の「国際卓越研究大」に名乗りを上げたようだ。文科省などは秋にかけて数校を選出、ファンドの運用益を分配、1校あたり年数百億円の研究費を最長25年助成するという。ファンドは1.1兆円の政府出資と8.9兆円の財政投融資を原資とし、JSTが選定した運用会社を通じて、世界の株式や債券に投資する。現状は、ブラックロック・ジャパンや三菱UFJ信託銀行等4機関であり、JSTが運用リスクの目安とする資産配分は株式65%、債券35%、ファンドの年間運用目標は4.49%だ。原資の財政投融資は42年度から20年間で政府に償還しなければならず、原資は取り崩さず、運用益の範囲内で支援をする方針だ。大学10兆円ファンド、支援対象の審査開始 年4%目標 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
海外の大学やノーベル賞基金も同様の仕組みであり、わが理科大でも、理科大IMという会社が運用し、そこから、研究教育環境整備に貢献している。こうした仕組みは素晴らしいことであり、金融エコシステムが世界並みになってきた。
長年、総合電機の課題と向き合い、経営重心論で、事業の広さや経営スピード等の定量化に取り組んできた。ポートフォリオの最適化は、まさに経営重心論で可能になる。最近は「総合」の問題点をプラットフォーマモデルで克服できる可能性も指摘した。その実例が日立のLUMADAやソニーもそうだ。東芝の島田社長による再生も同様だ。段階に応じて「変態」せよ 日本企業再生は可能か - 日本経済新聞 (nikkei.com)
本来は、株式市場が発達し、独禁法が厳しい米国では、「総合」「コングロマリット」は投資家には評判が悪かったが、GAFAは、新たなコングロマリットである。まさに、プラットフォーマモデルの中で、多様な事業を、データで繋ぎ、成長してきている。
最近、著名投資家のウォーレン・バフェットが、総合商社に注目しているらしい。そもそも、総合商社は日本に固有であるが、ゼネコンも「総合」土建業である。電機ではダメだった「総合」が商社でいいのは何故か。ウォーレン・バフェット氏からの宿題 商社は情報戦時代に輝けるか - 日本経済新聞 (nikkei.com)
グローバルファウンドリ(GF)が、ラピダスやインテルへの営業秘密等の共有でIBMを提訴したようだ。GFはIBMが関連する半導体部門を2014年に売却したのに、知的財産と企業秘密を提携企業に開示し、数億ドルのライセンス収入等利益を不当に受け取っていると主張しているようだ。ラピダスもインテルもコメントをしていない。米半導体製造大手、IBMを提訴 ラピダスへの技術共有で - 日本経済新聞 (nikkei.com)
TSMCやUMCに次ぎ、専用ファウンドリでは、シェア8%の大手であるGFは、元々、IBMを顧客とし、その工場も元々は、IBMのものであった。2017年には、IBM、サムスン電子などで構成される研究コンソーシアムが、5nmプロセスを開発したと、VLSIシンポジウム」で発表していた。しかし、その後、2018年に、7nm Fin-FETプロセス開発の無期限延期を決めている。ビオンド2nmでは、GAAが必要であるため、それ以前の段階である。
半導体デジタル会議は、半導体とデジタル産業(DCやコンピューティング等のインフラ、ソフトウェアや応用)が中心だが、蓄電池もある。さらに、今回、複合機とMLCCが取り上げられたことは興味深い。
複合機は、メカトロ、光学、化学、ソフト等の広範な摺合せにより、日本が強いが、市場は飽和、多くの企業がひしめいている。東芝傘下の東芝テックもある。最終製品は、成熟だが、要素技術は、国家安全保障の鍵になるかもしれず、業界再編で、中国企業等に技術が流出するリスクがある。
MLCCは日本が強い電子部品の一つだが、SEMCOやYageo等、アジア製も追い上げている。村田製作所の中国拠点は、技術漏洩リスクも指摘されている。台湾有事や朝鮮半島有事の場合は、サプライチェーンの混乱や拠点接収リスクもある。
4月3日に開催され、有識者メンバーとして参加、理研の五神理事長、JST橋本理事長、NTT澤田会長、Rapidus小池社長等から、小生も含め活発なコメントがあり、それを踏まえ、資料などが全面公開された。議事要旨も後日公開されるだろう。第8回 半導体・デジタル産業戦略検討会議 (METI/経済産業省)
今回の目玉は、2030年の売上目標が15兆円と明示され、これまで一括りだった戦略(Step1,2,3)が分野別に、ロジックだけでなく、メモリ、スペシャリティ(パワー等)、パッケージ、装置や材料までロードマップが示されたことだろう。
アンモニア発電は、カーボンニュートラルの救世主かと思っていた。アンモニアは、燃焼しても、CO2は出さず、肥料用途向けに既に広く利用され、水素と違って、運搬や貯蔵のコストも安い。このため、政府も、2030年までに、石炭火力の20%をアンモニア混焼にすることを目指す。中国韓国や欧州でも期待が高まっている。IHI、三菱重工、出光、日揮、JERAも取り組んでいるなど、企業の広がりが大きく、水素より、筋が良さそうに思う。アンモニア、脱炭素の「伏兵」 IHIが世界初タービン - 日本経済新聞 (nikkei.com)
課題は、アンモニア製造時のCO2であり、世界のエネルギー消費の2%を使うらしい。サプライチェーン全体でのCO2管理が必要だ。アンモニア混焼に不可欠な視点 水上武彦氏 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
エネルギーに関しては、熱力学の第一法則などがあるが、カーボンニュートラルに関しても、法則性があるのではないか。もしかしたら、「サプライチェーン全体では、どんな発電を使っても、カーボンニュートラルにはプラスにならない」など。
ハラスメントに対する意識の高まりは素晴らしいことだ。高校生まで、今から思えば、教師や、クラブ活動の先輩などからは、パワハラが常態だったので、尚更だ。
ただ、最近、それが、教育機関でも、会社でも、過剰反応となり、特に、現場や若者を相手にする中間管理職が疲弊している。
これまで長らく、小中高はもちろん、大学においてさえ、学生募集は、それほど重要な仕事ではなかった。国公立では、意識すら少なかったのではないか。私学では、重要な問題だが、理事会や学長等の仕事の仕事であったろう。しかし、少子高齢化の中で、大学は淘汰され、学生確保、特に、如何に優秀な学生を集められるかが存続を決める。私学は尚更である。
そして、本来、教育理念があり、そこでターゲットとする学生と、カリキュラムの内容は、リンクすべである。実際、大学まで、あるいは、学部までは、文科省が標準を作り、それから逸脱するケースは少ないだろう。
これに対し、ビジネススクールは、独自の理念の中で、期待する人材のポリシーがあり、それに対応するカリキュラムがあり、多様だろう。ただ、MBAとMOTはやや異なり、世界で広がっているMBAは、標準的であり、カリキュラムでの差別化余地も大きくない。
経営重心論で、企業や産業だけでなく、マスコミ、国家なども含め。固有周期を論じてきた。固有周期は、製品買替サイクル、製品寿命にも関連するが、これが、組織のトップの任期にも、相互に影響し合う。人事異動のサイクルも関連する。電機業界の固有周期は概ね8年だが、社長の任期も8年が多い。これに対し、一般的に、オーナー経営者は、長く、他業界では、部品や流通度は、固有周期が短く、任期も短い。マスコミの担当や銀行や役所も、特にエリート程、短めで、2-3年が多い。
大学では、学長や理事長は比較的長いが、副学長の担当、そして、研究科長/学部長や専攻長/学科長の任期は1年毎であり、長くても、2-3年である。また、事務も2-3年で変わる。問題がある部署は長めになる場合が多い。
液晶パネルは価格が反転した。テレビ用液晶パネル全面高 3月、在庫調整進み調達増 - 日本経済新聞 (nikkei.com)液晶市況は、半導体メモリ市況の先行指標なので、そろそろ見えてきたと思ったが、これに対し、日経は、悲観的な記事だ。サムスン半導体14年ぶり営業赤字 苦境期に再編の歴史 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
しかし、やはり、台湾では、メモリ底打ち、のニュースが出ている。
地球上の人工物が、2020年に自然物を上回ったらしい。ネイチャーの2020年12月に掲載された、イスラエルのワイツマン科学研究所Ron Milo教授らの研究によると、「地球の生物量の質量と人工物の質量(人類によって生産された非生物固体の質量)に関して、1900年から現在までの変化を推定している。人工物の質量=人為起源物質量(anthropogenic mass)は、20世紀初頭には全球の生物量の3%だったが、約120年を経た2020年に、全球の総生物量を上回る」が示された。「人為起源の廃棄物量を含む全人為起源物質量は2040年までに3テラtを超え、地球上の生物量(乾燥重量)のほぼ3倍に達する」と予測されている。Nature ハイライト:人工物の質量が生物量を上回る | Nature | Nature Portfolio (natureasia.com)
あまりに壮大な話で、理解を超える面も多いが、カーボンニュートラル、海洋プラスチックごみ、自然災害(あくまで人間にとって)増加、等々、関連はあるだろうし、見えざる負債や見えざるコストが増えてくるだろう。その中で、経営やビジネスモデルの常識も変わるだろう。